2013年10月07日

ワヤン・プルワントのこと(20)


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プンゴセカン通り(影武者の近く)にあるイタリア料理の繁盛店「マンマミーア」が、道路を隔てた目の前に移転した。

なぜ移転したか? 理由は謎だ。

移転先は、すでに3度ほどイタリア料理店が短期間のうちに開店閉店を繰り返している場所。

相変わらず「マンマミーア」は繁盛している。

「マンマミーア」の空店舗にイタリア料理店が出店したが、1ヶ月程で閉店してしまい取材していない。

そのあと8月2日に、店名が変わってイタリアレストランがオープンした。

「またイタリアンか!」私は絶叫しそうになった。

ウブドは今、イタリア料理がブームかのように次々と開店している。

特に、この界隈は激戦地だ。

私の取材は、最低1ヶ月を経過することを条件としている。

ウブドの店舗は、目まぐるしく変わる。

ガイドブックには、6ヶ月以上経過しない店舗は紹介しないように注意している。

1ヶ月を待って、8月2日に開店した新店舗「マリクマリ=marikemari」を取材。

内装は、ほとんど「マンマミーア」のままで、ピザ釜がグレードアップされていた。

人気絶好調の「マンマミーア」の正面という条件で勝算はあるのか。

この店も早々と撤退するだろうと客観視した。


ある日、ワヤン・プラワント(Wayan Purwanto)が影武者を訪ねて来た。

話を聞くと、なんと「マリクマリ」のマネージャー兼シェフはプラワントだった。

「大ショック!」

イタリアンフードに食傷気味のウブドで、イタリアレストランの新参入は難しい。


ワヤン・プルワントは「スマラ・ラティ」創立期の客員メンバーの一人だった。

デワ・マハルディカ(1996.9.13没)と交互に舞台に立ち、クビヤール・トロンポンかクビヤール・ドゥドゥックを踊っていた。

「今夜は、どちらが踊るのかな」前奏のあと、中央から出てくる踊り手を凝視したものだ。

もちろん私はプルワント待ち。

プルワントの切れのある力強さと妖艶なしなやかさを併せ持つクビヤール・ドゥドゥックに、私はシビレタを感じた。

創作者のマリオもそうだが、本来は男らしい男がしなやかに踊るから見応えがあるのだ。

記憶に乏しいが、マハルディカが他界してから1年ほどしてプルワントの姿が見えなくなった。

マハルディカが踊っている時は “オカマ” の踊りと言われていた。

プルワントが出演しなくなったあとスマラティの公演を見た観光客が「プリアタンで見た時もそうだったけど、この踊りって、お客を笑わせるお笑い系ですか?」と聞かれた。

「化粧が “おてもやん” なんだよね」と、勝手な感想を言う。

観光客から見た場合、それも正しい意見なのかもしれない。

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子供で上手な子はいるし、女性や中性的な男性の素晴らしい踊り手もいる。

中腰での踊りは、生半可な体力ではできない。

腰高や座り込んでいる踊り手がいるのには、ガッカリする。

「どんなバリ舞踊にも言えることだが、美貌に惹き付けられて技量のチェックを見逃しがちにならないように、チェックする時には眼を細めて全身を、特に足下に注目して見るように」と高名な舞踊家に教えられた。

現時点でクビヤール・ドゥドゥックの頂点は、デワ・ニョマン君だろう。

男色的には、眉目秀麗なデワ・ニョマン君は好きなタイプだ。

美しいにこしたことはないが、私的には、クビヤール・ドゥドゥックは美形が媚を売る踊りではないと思い込んでいる。

未だに、プルワントの右に出るクビヤール・ドゥドゥックの踊り手に出会ったことがない。

プルワント絶賛で、デワ君ゴメン。


「居酒屋・影武者」の開店と「スマラ・ラティ」の創立期が近く、どちらも熱い時期だったこともあり、公演後、影武者にメンバーが集った日が続いた。

芸能談義に花を咲かせた夜が、幾度もあった。

同じ釜の飯を食った仲間という感じだ。

毎週のように定期公演に顔を出した。

奉納舞踊にもたびたび同行したし、幾度か共演もさせて頂いた。


突然、プルワントは私たちの前から姿を消した。

客船に乗って働いていると、噂で聞いた。

ボーイとして船に乗り、マイアミに降りてからは、中華の料理人、最後は寿司職人として5年ほど働いて帰国。

11年間のアメリカ・マイアミ生活。

「一度も踊りたいとは、思わなかった」私が思い描いた想像とはかけ離れた答えが返ってきた。

「なぜ、海外に?」という質問をしても、私の拙いインドネシア語では、たとえ答えが返ってきても理解できなかっただろう。

また、話してもくれなかったかもしれない。


現在は、師匠のイダ・バグース・ブランシンガ(Ida Bagus Blangsinga)を後援する立場にあり、本人が踊ることは少ない。

2012年9月1日:会場「GEOKS」にて、日本人舞踊家・大西由希子とジョイント公演「PENCARIAN」でコンテンポラリーを披露している。

これが彼の舞踊の方向性のような気がする。

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そんな彼がマネージャー兼シェフをする店が「マリクマリ」だ。

これは応援しないわけにはいかないだろう。

posted by ito-san at 17:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ウブド村徒然記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする