2013年12月05日

映画出演の続き・その壱(30)

「そのうち気が向いた時に書こうかな」なんてコメントを書いた、映画「Puputan Margarana」出演(18)の続き。

これは、1995年の出来事です。

思いのほか資料が集まらず、見切り発車です。

読み返してみると、意外と面白くない。

こういった話は当事者が盛り上がっているだけで、他人には興ざめかもしれない。

記録として残しておくために、とりあえずアップした。

では「発車オーライ」。


映画には、残留日本兵の苦闘も表現されている。

幸か不幸か、私は戦後生まれの「戦争を知らない子供たち」のひとりだ。

もちろん、今は、子供ではない。

私は役つくりのため、残留日本兵に関する書物を数冊読み、彼らを理解しようとした。

意外と凝り性で、熱しやすく冷めやすい自分の性格に、今更ながら気がついた。

ウブド在住の塩田さんは、太平洋戦争に出征している。

当時の話を伺うためアジ・ホームステイを訪ねた。

男性長寿(1924年生)ナンバーワンの塩田さんの健康を心配して、私はたびたび宿を訪ねている。

グライダーで大空を翔ていた大学生時代の話。

19歳で学徒出陣した話。

空軍の飛行士として、インドネシアのバンドゥンに駐留した話。

バリ島に飛行してきた時の話。

ジャワ島・バンドゥンで終戦を迎えた話。

約4時間、戦争の罪悪と青春の思い出を熱く語ってくれた。

実感はわかないが、戦争の悲惨さは理解できる。

体験者の話を聞けるのは、貴重なことだ。

「いつまでも元気でいてください」

この後、何度も訪問して元気づけてきたが、2009年3月27日、塩田さんは亡くなった。

戦後は、自衛隊空軍に教官として出向いた。

その時のアクロバット飛行の写真を見せてもらったのを思い出した。


友人たちとは、カットが違うためか、別れ別れになることが多かった。

主役クラスの役者とは、一度も撮影を一緒にすることはなかった。

まずは、私の撮影現場からお伝えしよう。

Margarana8.jpg

現場には、国防色の軍用トラックが数台止まっている。

近づいて見ると、普通トラックにベニヤでボディが作られた模倣軍用トラックだった。

ナンバー・プレートには「場利」と書かれてある。

「場利」で正しいがどうか訊かれたが、私にも知る由はない。

旧式バイクは、マニアからのレンタル。

大きくカーブする田舎の道で撮影開始。

私の眼の前には、20〜30人の村人役が道路に横に広がって座り込んでいる。

大勢の村人を前にして、日本軍人が演説をするシーンだ。

演説はインドネシア語。

セリフは、今さっき渡されたばかりの薄い台本の中の数行。

契約の日に手渡された台本の一部に載っていたセリフに似ている。

数行とはいえ、インドネシア語のまったく話せない私には、覚えるのもままならない。

棒読みのセリフに、バリ人の男優さんが演技指導してくれる。

演技どころではないのに。

何度も発音を直される。

私が物覚えの悪いのを理解した助監督は、大きな紙にセリフを書き写した。

3枚用意されている。

「顔を左に、右に、中央にと、相手を見て話すように」と助監督から注文が出る。

セリフの書かれた紙が村人の背面に掲げられる。

「バパパパ・イブイブ・ソダラソダラ・・・・」私はセリフを読む。

紙が上下左右、ふあふあと動く。

目線を自然の動きにするためだと言うが、あまり動かれると読めなくなってしまう。

私の顔も一緒になって上下左右する。

さあ本番!

終わってみれば、たいしたセリフではなかった。

凝り性な私のことだから、前もって渡されていれば完璧な演技が期待できたのに。

残念である。


夜間に、デンパサールにある王宮を使用して撮影をした日のこと。

車の中で軍服に着替えて、打ち合わせもなく前庭で待機。

撮影スタッフ少々。

スタッフに、屋敷に入るように促された。

細田さんと私が、屋敷の門を開けて入ろうとする。

「もうちょっと乱暴に開けてください!酔っぱらいの感じで」と注文が入った。

えっ! いきなりの本番かい?

酔っぱらい役は、細田さん。

中に入ると、奥には照明があたり、人の数も多かった。

内部で撮影があったのだろう。

というより、我々の動きにカメラの焦点が合わされていた。

このあと、酔っぱらいの細田さんが屋敷の娘にちょっかいを出すシーンの撮影があった。

私は、酔っぱらいをだなめる役で、後ろ姿だけ。

セリフは日本語。

日本軍人が醜態を見せるシーンだ。

占領当時の日本軍の中に、恥ずかしい行為をした軍人もいたのだろう。

記憶にないが、細田さんは、卑猥な日本語のセリフを言わされていた気がする。

私は、恥ずかしい気分になったのを覚えている。

細田さんは、スケベな酔っぱらい役をなんなくこなした。

本人とすれば、酔っぱらい役は地でいけるが、スケベ役は嬉しくなかったと不満そうだった。


そう言えば、永田さんも殴られるほどの悪役で出演している。

「後味が悪い!」とボヤイていた。

こうやって、いくつかのショットを繋ぎ合わせて映画はできていくのかな?

たくさんの日本人滞在者を巻き込んで「映画・Puputan Margarana」の撮影は進んでいくのであった。

〜その弐に続く〜

posted by ito-san at 16:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ウブド村徒然記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする