2013年08月01日

ポトンバビ・完全取材(17)

建築中の「ワルン・スバリ」の様子を見に、スバリ村に出掛けた日曜日の昼下がり。

まずは、グスティ家に立ち寄ろう。

いつものように屋敷の裏口から入ると、裏庭に大勢の男衆の姿が見えた。

ムラジャン(家寺)のオダラン(寺院祭礼)の準備だろう。

前年に100年目の大きなオダランをすませた翌年も、それなりに大きいと聞いている。

明日の29日が、そのオダランの日だ。

忘れていたわけではない。

明日、来ることができるかどうかわからないので、今日顔を出したのだ。

ラッキーなことに、なんと、ポトン・バビ(Potong Babi)が今まさに始まろうとしているところだった。

大きな儀礼では、ポトン・バビが行われる。

人間の代わりに、豚が生け贄になるのだ。

儀礼が小規模の場合は、鶏やアヒルが生け贄になる。

深夜に行われることが多いポトン・バビが、真っ昼間に見学できるタイミングは少ない。

噛みタバコをもらって、すぐに失礼するつもりでいたが、このチャンスは見逃せない。

久しぶりのポトン・バビ体験の再演だ。


ポトン・バビはインドネシア語で、ポトン(Potong)が “切る” バビは(Babi) “豚” のこと。

バリ人同士では、バリ語で“ナンパー・チェレン”と言っている。

チェレンが豚。

早い話 “豚の屠殺” だ。

動物の屠殺シーンを見るのをラッキーなって言ってると動物愛護団体から抗議がきそうだが、これはバリ人の信仰するヒンドゥー教の神聖な儀礼である。

そんなわけで、動物愛護の皆さん、私の無礼な発言をお許しください。

前回は参加して醜態を晒したので、今回は写真取材に専念することにした。

醜態は「極楽通信・UBUD:「14ポトン・バビ体験記」を読んでください。


まずは、豚に聖水をかけ清めることから始まる。

これがバリらしいところだ。

豚のノドにナイフが入る。

鮮血がドッと流れ出す。

前回は、竹の半割をノドに刺し込み樋にして、血を流して下で鍋で受けていた。

今回は、直接、鍋に落とし込んでいる。


血が止まると、豚を移動した。

バケツの血は、儀礼の料理・ラワールに混ぜられる。

こぼれた血を、犬が美味しそうに舐めている。

バーナーが用意された。

運ばれた豚の、産毛を焼くのだ。

バーナーの調子が悪いので、伝統的手段である枯れた椰子の葉束を燃やした。

産毛を焦がし、そげ落とす。

そして、洗い流す。

Potong-Babi1.jpg

腹の中央にあるヘソを切り、引っ張ると紐状に繋がった腸のようなものが出て来る。

それを丁寧に取り出していく。

血抜きを終わっているからか、ほとんど血は出ない。

大きく腹を裂いた。

大小様々な腸が現れた。

それをすくい上げるようにして取り出しだ。

意外と冷静に見つめている私がいるのに驚く。

腸は、小川に運ばれて洗われる。


腸が出された肉塊となった豚は、シートの敷かれた場所に移動される。

いよいよ、解体作業だ。

単に切るだけではなく、叩き切る、削ぎ落とされる。

手際よく解体されていく。

生臭さからだろうか、少し吐き気がしてくる。

血を見たら、耐えられないかもしれないと思った。

男衆は平気な顔で作業に取り組んでいる。

Potong-Babi2.jpg

解体作業が終わると、続いて供物とラワール料理にかかる。

表皮+脂肪と部位に切り分けていく。

切り落とされた肉の固まりは、それぞれの行程にわかれる。

各部位に分かれた肉は、大きな鍋で煮込まれるもの、細かく刻まれるもの、ひき肉機にかけられるのもとある。

煮込まれた表皮+脂肪は、サイコロ状に切られ串の刺されるものと、脂肪を剥ぎ取った表皮は千切りされてラワールに混ぜられる。

剥ぎ取られた脂肪は、飾り物に使われる。

ひき肉機にかけられた肉は、つくね用と腸詰め(ウルタン)用に分けられる。


今まで見たことのない手の込んだ細工の竹串に、つくねをつけている数人に男衆がいる。

プマンクに尋ねると、供物用のサテで9種類あると教えてくれた。

9種類は「椰子の実の話(29)」で勉強したナワォ・サンゴ(Nawa Sangga)のことだった。

9方位に、神の武器(神器)を竹で形作り、そこにつくねをねりつけていく。

これは、供物として指定の位置に置かれる。

Nawa-Sangga.jpg

これら一連の作業が滞りなくスムーズ行われている。

これだけの仕事量を、10数人の男衆が流れるように携わっている。

素晴らしい連携プレイだ。

慣れているとはいえ、見事な分業システムだ。

力もいるし、動きっぱなしで疲れているはず。

無駄口や一服する者はおらず、皆、真剣だ。

これは、バリ人のゴトンロヨン(相互扶助)の精神からくるものだろうか。

私には、到底出来ない作業だ。

オダラン前日のブト・カロを鎮めるムチャル儀礼まで、いっきに突入していった。

posted by ito-san at 18:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ウブド村徒然記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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