2014年05月02日

実るほど頭の下がる稲穂かな(51)

ウブドの “ジューチン” と言われることがある。

そんなことを言われて喜んでいる私ではない。

ジューチンは「獣珍」か「住沈」かもしれない。

たかが24年間の滞在で重鎮はないだろう。

この頃、素直に喜べない。

頑固オヤジになったということか。

なんの希少価値もない昔話をするだけの長期滞在者。

ほんのちょっぴり、バリに詳しいバリ通だけのこと。

プロの研究家でもない。

先輩面してウブドを語るのも気が引ける。

自分が高邁な態度になっていないか、反省させられる。

ちょっとバリを理解しただけで、優れていると勘違いしてしまうのが怖い。

あたかもすべてを知り尽くしているように、知ったかブリっ子するのも嫌だ。

バリ人の方が詳しいに決まっている。

私は、バリに寄生している生きているだけ。

時に、その知識で収入を得ることもあるが。

24年も滞在すれば、それだけの年輪分は知識を得るのは当たり前。

バリ人の知識には負けるのに、偉そうに知ったか振りすることが恥ずかしい。

sidemen.jpg
2011年@sidemen

嫌なことを思い出した。

思い出すと、いつも背筋に悪寒が走る。

かなり昔のことだ。

バトゥブラン・デンジャラン村のダラム寺院でチャロナラン舞踊劇(calonarang)の奉納があった。

開演前、日本人男性観光客が席を確保しようと舞台を横切った。

それを見ていた村長が、日本人男性のために、建物の階段横のスペースを用意をした。

クライマックスに、魔女ランダが簡易建物の階段から降りてくる場所だ。

鑑賞する側にとって、ここは特等席だ。

calonaran.jpg
トゥブサヨ村のチャロナラン舞踊劇

日本人男性は、一生懸命鑑賞しビデオを回していた。

奉納舞踊が終わった。

日本人男性は、余韻を受け止めているかのように、のんびりとカメラを鞄にしまっている。

丸顔のせいか、いつもニコニコしているように見える。

舞台は村人も引いて閑散となった。

ここまでは何も問題はなかった。


このあとがいけない。

村長が舞台を横切って、日本人男性に近づいて行く。

日本人男性は気がつかなかったのか、荷物を片付けるとそそくさとその場をあとにした。

村長は、舞台の中央でオットットとなっている。

おらが村の自慢の芸能をどう感じたか、評価を聞きたかったのだろうな。

これは、私の眼の前で起こったシーンだ。

この夜は、デンジャラン村出身の高名な男性舞踊家がチャロナランを演じたので、私も鑑賞していた。

私が追っかけをしているトペンの踊り手だ。

「日本料理店・影武者」の女将・由美さんの義父で、今は亡きスウェチャ氏だ。

デンジャラン村では、老女チャロン・アロンを演じた踊り手は魔女ランダも演じることになっている。

日本人男性は、周囲のバリ人に一言のお礼も言わずに帰っていった。

スウェチャ氏が「今の日本人は何者だ?」と私に尋ねてきた。

彼も村長のオットット風景を見ていたのだろう。

「日本でガムランを教えていて、バリ関係の著書も出している人物です」私は答えた。

スウェチャ氏は、少々腑に落ちない顔で「そうか」と一言つぶやくと戻っていった。

randa1.jpg
1990年チャロナラン舞踊劇@ウブド
(ロジャー氏がランダと戦う役で登場)

日本で名が知られているから、この村でも自分の素性が知られているとでも思っているのだろうか。

そんなはずはないと思う。

そうであったら寂しい限りだ。

日本とバリとの橋渡しという重要な役割を担っている人物であること知っている。

バリの芸能や知識で生業を立てている人間が、あの態度はよろしくない。

鑑賞場所を確保してくれた人物に、お礼を言いたい。

素晴らしい芸能を演じた村人に、感謝したい。

単に鈍感なのかもしれないが、こうした態度が日本人の評判を悪くしていく。

私なら、誰でもいいから近くにいるバリ人に「テレマカシ」と言っているだろう。

彼のリアクションに、多いに疑問が残った。

もちろん、私が黙礼しても返ってはこない。

ニコニコした顔に「私は特別なんだ」と高慢印が見えるようだ。

謙虚であって欲しい。

それ以来、私はこの人物を認めないようになってしまった。

「人の振り見て我が身を・・」身が引き締まる思いだ。

こんなことにならないようにと、自分を戒める場面であった。


posted by ito-san at 20:18| Comment(2) | TrackBack(0) | ウブド村徒然記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も何もかも初めてな事もあって、お祭りで舞踊見る時、ありがとうと言わなかったと思います。客として失格ですね。気づけて良かったです。次回から気をつけます。
Posted by yukako at 2014年05月03日 07:29
yukako
さん
私も「人の振り見て我が身」の毎日です。
いつまでたっても、何歳になっても反省ですね。
Posted by ito-san at 2014年05月03日 15:57
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