入手の難しい本が手に入った。
毎年2月か3月にあるバリの祭礼日ニュピに合わせてバリを訪れている知人が持って来てくれた。
1990年1月11日出版の中古品を、古本屋で見つけてくれた。
知人の名前は、田尾さん。
2ヶ月ほど滞在していく。
彼は、バリ関係の本を見つけるとお土産に持って来てくれる。
今回の本の表題は、「ある踊り子の愛の奇跡 ニ・ポロック」。
財団法人 大同生命国際文化基金(アジアの現代文芸)から発行されている。
著者:ヤティ・マルヤティ・ウィハルジャ。訳者:山根しのぶ。
ニ・ポロックの名前は、知っていた。
ベルギー人画家ル・マーヨールと結婚した、バリ舞踊レゴンの踊り娘として。
サヌール海岸に美術館があり、ubud-chinbotu「ウブド沈没」以前の旅で訪れことがある。
その時は「サヌール・ビーチ・ホテル」、現在の「インナ・グランド・バリ・ビーチ」に宿泊した。
かれこれ30年以上前の話だ。
ル・マーヨールは、1932年にバリを訪れている。
その時に、モデルになったのが当時15歳のニ・ポロックだった。
3年後に結婚している。
歳の差37。
1946年、サヌール海岸に居を構えた。
ル・マーヨール:1880〜1958。
ニ・ポロック:1917〜1985。
彼女の半生を綴ったのが「ある踊り子の愛の奇跡 ニ・ポロック」。
読んでいて、ル・マーヨールの情熱が伝わる。
彼らの住居が、ル・マーヨール美術館として一般公開されている。
「ニ・ポロック」を読み終えて、にわかに美術館を訪れてみたくなった。
サヌール訪問は、昨年9月26日、サヌール沖に難破した船の石碑を見に行って以来。
(※その時の話は「バリ島物語・コミック版が出版(87)」に書いた)
美術館の開館時間を調べるために、ガイドブック「地球の歩き方・バリ島」を開いた。
ガイドブックには、画家の名前をル・メイヨールと表記している。
「ニ・ポロック」の本の日本語訳には、ル・マーヨールとある。
スペルは、Le Mayer。
チケット売り場の女性は「ル・マーヨール」と発音した。
どちらでも問題はないのだが、ちょっと気になったので記録しておいた。
展示遺作は、89点となっている。
開館時間と入場料が変っていたので訂正しておく。
金曜日をのぞいて、毎日開館08.00〜15:30。
いやいや、祝祭日は休館のようだ。
金曜日は、08.00〜12:30と早じまいだ。
入館料は、ツーリスト価格・大人Rp50,000-子供Rp25,000-。
ル・マーヨール美術館は、30年前となにも変らず、そこにあった。
海岸端に、ひっそり建つ一軒家。
美術館はサヌール唯一の観光スポットだが、観光客の目には入らないようだ。
海岸には、マリンスポーツと海水浴場の観光客。
その観光客を当て込んだ土産店が並ぶ。
付近の景色は変っているのだろうが、私の記憶は曖昧だ。
美術館の管理は、行き届いているようだ。
思っていたよりも、大きな建物ではなかった。
海岸の村・サヌールで、愛する女性をモデルに絵筆をとって一生を終えたル・マーヨール。
1932年から、インドネシア激動を時代を肌で感じながらも自由奔放に描きなぐった絵は、どれも力強い。
何故か、勇気をもらった気がした。