2017年07月10日

飛ぶ鳥、跡を濁さないで!(140)

ある夜の「和食・影武者」の大テーブル。

常連に名古屋からの友人Mが加わって、いつもより賑やかな晩餐。

その席で、友人から寝耳に水の一言が発せられた。

「Aさんが、バリ南部に引っ越したようだよ」

部屋をAさんに紹介したのは私。

私がコロンビアの旅に出る前に、同じ条件で貸してもらえるように頼んだ経緯がある。

家賃が80万ルピアから100ルピアと値上げになったが、それでも充分に安い。

私に、断りも入れずに出て行くわけがない。

「Aさん、大家さん家族と、うまくいってなかったのかな?」

「そんなこと、知らないわ」

私に発言に、K子さんから冷たい言葉が返ってきた。

Aさんが引っ越した理由を知っていそうな口ぶりだ。

「どうして引っ越したのかな?」と聞く私に、友人Mは、「話し合った方が良いよ」と言う。

私に落ち度があるように受け止められる言葉だ。

問題が発生した時の解決策が、話し合いからの和解。

勘ぐれば、何か問題があるということだ。

Aさんが勘違いしているかもしれないので、話し合えということだろうと、善意に解釈。

しかし、何を話し合えというのだ。

私に直接説明されたわけでもなく、他人からの内容もわからないアドバイスに、どうして私から和解を申し込まなければいけないのかが腑に落ちない。

これまでのK子さんにしては、歯切れの悪い言葉。

友人MとK子さんは、Aさんから私に落ち度のある話を聞いているかもしれない。

その場では良案が見つからず、私に話し合えと伝えたのかもしれない。

誤解を解くなら私と直接話すようにようと、なぜアドバイスできなかったのだろうか。

古くからの友人に、信頼されていないと感じたのがショックだった。

次の日私は、Aさんが本当に引っ越したかを確認するために、P家を訪ねた。

部屋は、もぬけの殻。

掃除は、されていなかった。

「Aさんは、どうしてここを出ていったの?」

「急に、出ると言って、慌ただしく引っ越して行っちゃった」

「理由はわからないの?」

「儀式があるのでテーブルを一つ、一日だけ貸して欲しいと頼んだら、怖い顔をして睨まれた。

それしか考えられないんだよ。

家賃値上げの件は、itosanから頼まれたので保留にしたし。

何が原因で出て行ったのかまったくかわからないので、気になってしかたがないんですよ。

家族みんなで気を使ったつもりだったが、残念です(少々涙目)。

そうそう、itosanのオーブントースターの件で、一度、揉めたことがあったな。

でも、それが原因とは考えられない」

「なぜ私に、一言の連絡もせずに出て行ったんだろう?」

「冷蔵庫、持っていったよ。itosanと話はついていると言っていた。そう言われると、それ以上言えなくて」

「プリンターと変圧器もないね?」

壊れたので処分したのなら説明があるはずだ。

そのうち何か言ってくるだろう。

夜逃げのように引っ越していった、原因はわからなかった。

まさか、冷蔵庫を無断で持って行ったことが、原因とは思いたくない。

こちらが善かれと思ってしたことで、相手が傷つくこともある。

知らないうちに、傷つけたことがあったのだろうか。

それなら、誤解を解いた方がいい。

私は大家さんをなだめて、その場をあとにした。


3日後。

もしかしたら、Aさんが委託で商品を置いている店の人なら情報があるかもしれないと、訪ねた。

委託のコーナーは、カラッポだった。

「委託の期間が終わり、今後は場所代を払ってもらう契約になっていたのですが、

商品を撤収したまま、顔を見せないんですよ。

この通り、釘のあとを残したままにして。

itosanの話を聞いて、Aさんはそういう人なんだな、と納得しましたよ。

今後は、関わりを持たないようにします」

Sさんは、不浄な物でも捨てるように話を終えた。

私は「飛ぶ鳥跡を濁さず」を心がけている。

世話になった人に、後ろ足で砂をかける行為が、もっとも嫌いだ。


数日して、Aさんが影武者に現れた。

私の顔を見ないようにして、帰って行った。

え〜! どうしちゃったの?

私、悪者! 犯罪者!

身に覚えがない!

濡れ衣だ!

「和るん・あんかさ」でも「ティー・ルーム」でも、無視された。

無視されるって不愉快ですね。

何度も無視されると、こちらも顔を合わせてはいけない気持ちになってくる。

自己嫌悪になる。

Aさんは私に、まったく関係のないヒトに戻れとアピールしているのだろう。

知人は、何か誤解しているのだろうと言う。

誤解を説くためには、私から話しかけるべきなのか。

無視する知人に、なぜ、話しかける必要があるのか。

理由もわからないのに、和解を求めることはできない。

「去る者追わず、来るもの拒まず」が、私の流儀だ。

私もSさん同様に、今後は関わりを持たないようにしようと決めた。

ちなみに、大切な人なら、無視されても修復をはかる努力をしますよ。

結論は、大切な人じゃなかったということか。

ゴメン。

いや〜人間関係って難し〜い!

(※この逸話は、実体験にもとづいたフィクションです)


posted by ito-san at 15:01| Comment(3) | TrackBack(0) | ウブド村帰郷記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする