今さらながら、気づいた。
定期公演のほとんどが、各種のガムラン形態の伴奏で舞踊&舞踊劇を上演するということを。
ガムランは、ゴン・クビヤール、スマル・プグリンガン、グンデルなどの青銅鍵盤楽器が主流だが、定期公演ではこの他に、ティンクリックやジェゴグなどの竹ガムラン、竹笛ガンブー、口琴ゲンゴンなどの希少価値のグループも公演している。
ケチャの合唱も、口ガムランと言われているから、同じジャンルになるのかもしれない。
ワヤン・クリット以外は、同じ土俵で評価するべきか?
バリ舞踊定期公演でツーリストに人気なのは、レゴンとケチャが横綱だ。
レゴンは、ガムラン青銅鍵盤楽器を演奏し、踊り娘の多い華のあるグループに客が集まる。
ケチャは、世界でも類のない芸能なので、よほど立地条件が悪くない限り観客は入っている。
さて、どちらに軍配を上げようか?
日程の都合でどちらかしか見られないとすれば、ケチャを選ぶツーリストが多いようだ。
どの会場も、満員かそれないり入っている。
「ブラボー!」の声が上がる会場もある。
ユニークなケチャのパフォーマンスに、誰もが度肝を抜かれるだろう。
今回ケチャは、レゴンと別のジャンルとして評価することにした。
少し、ケチャのウンチクをたれさせてもらう。
ケチャは稲の収穫の際、男衆が楽器を使わず合唱した「サンヒャン」の儀式から生まれたと言われている。
合唱には、ガムラン音階が用いられていた。
この合唱に、古代インド叙事詩「ラーマーヤナ」物語を取り入れて観賞用の舞踊劇に変化させたのが、現在のケチャだ。
創作には、近代バリ絵画の祖ウォルター・シュピースが大きく関わっている。
ケチャは奉納舞踊ではなく、娯楽として鑑賞されるもの。
レゴンも含めて、定期公演は奉納舞踊とは異なる芸能と考ていい。
ケチャは、大人数の上半身裸の男衆=ケチャ軍団が主役だ。
オイルランプの薄暗い明かりの中で、これまで耳にしたことのない合唱が繰り返される。
合唱に、ときどき手拍子が入る。
しばらくして、ケチャ軍団の組んだ円陣の中で、インドの古代叙事詩「ラーマーヤナ」の舞踊劇が始まる。
ラーマーヤナが主流だが、マハバラータを演じるグループもある。
ケチャ軍団の「チャッチャ」の掛け声は、本来は畑の中で聴くカエルの合唱だった。
「ラーマーヤナ」に猿の軍団が登場する場面で、猿を演じるところから、モンキーダンスと呼ばれるようになった、という説がある。
確かに、猿の声にも聞こえる。
演舞は、立ち上がったり寝転んだりして、独特な動きで森や波や猿を表現する。
物語の内容は理解出来なくても、その合唱とパフォーマンスは鑑賞に堪えられる。
世界に類のない幻想的な演舞に、ツーリストは酔いしれることだろう。
残念なのは、暗くて写真は撮りづらいこと。
雨がふると、屋内で上演されること。
ケチャの公演は、星空のもと寺院の境内がベスト。
ダラム寺院ウブドのロケーションは最高だ。
そうそう、サンヒャン・ジャラン(ファイヤー・ダンス)も必須だね。
ケチャ部門の順位を発表します。(8グループ)
一位・金曜日「ウブド・カジョ(Ubud Kaja)」ダラム寺院ウブド
二位・火曜日「ウブド・トゥンガ(Ubud Tengah)」バトゥカル寺院ウブド
三位・木曜日「サンバハン村(Sambahan)」プセ寺院ウブド
四位・水・土曜日「タマン・カジョ(Taman Kaja)」ダラム寺院タマン
五位・月曜日「ジュンジュンガン村(Junjungan)」デサ寺院ジュンジュンガン
六位・木曜日「スマラ・マディア(Semara Madya)」プリアタン王宮
七位・金曜日「パダン・スバダラ(Padang Subadra)」パダン・クルタ寺院パダンテガル
八位・日・水・土曜日「タルナ・ジェンガラ(Trena Jenggala)」クロンチン寺院パダンテガル
※特別寄稿「火曜日のウーマン・ケチャ」
先入観とは恐ろしいもの。
女性のケチャは、声に迫力がなく見応えしないだろうと、見くびっていた。
ゴメンナサイだ。
まあ男性ケチャだって、声量のないグループはいくつもある。
ケチャ軍団は、総勢50名。
観客数170名は、人気のある証拠だろう。
サンヒャン・ジャランは、今まで見たことのないテクニックだった。
いきなり、燃え盛る椰子柄殻の山に飛び乗った。
従来のように火のついた椰子殻を、すり足で蹴るのではない。
その後も火の上を歩く歩く。
火の上に座り込んでしまったのには、度肝を抜かれた。
こんな荒技のサンヒャン・ジャランは、初見だ。
見応えがあるよ。
そんなことで、評価はケチャ部門二位となりました。
動画でご覧下さい。