2017年10月17日

ウブドのバリ舞踊定期公演・ケチャ(158)

今さらながら、気づいた。

定期公演のほとんどが、各種のガムラン形態の伴奏で舞踊&舞踊劇を上演するということを。

ガムランは、ゴン・クビヤール、スマル・プグリンガン、グンデルなどの青銅鍵盤楽器が主流だが、定期公演ではこの他に、ティンクリックやジェゴグなどの竹ガムラン、竹笛ガンブー、口琴ゲンゴンなどの希少価値のグループも公演している。

ケチャの合唱も、口ガムランと言われているから、同じジャンルになるのかもしれない。

ワヤン・クリット以外は、同じ土俵で評価するべきか?


バリ舞踊定期公演でツーリストに人気なのは、レゴンとケチャが横綱だ。

レゴンは、ガムラン青銅鍵盤楽器を演奏し、踊り娘の多い華のあるグループに客が集まる。

ケチャは、世界でも類のない芸能なので、よほど立地条件が悪くない限り観客は入っている。

さて、どちらに軍配を上げようか?

日程の都合でどちらかしか見られないとすれば、ケチャを選ぶツーリストが多いようだ。

どの会場も、満員かそれないり入っている。

「ブラボー!」の声が上がる会場もある。

ユニークなケチャのパフォーマンスに、誰もが度肝を抜かれるだろう。

今回ケチャは、レゴンと別のジャンルとして評価することにした。


少し、ケチャのウンチクをたれさせてもらう。

ケチャは稲の収穫の際、男衆が楽器を使わず合唱した「サンヒャン」の儀式から生まれたと言われている。

合唱には、ガムラン音階が用いられていた。

この合唱に、古代インド叙事詩「ラーマーヤナ」物語を取り入れて観賞用の舞踊劇に変化させたのが、現在のケチャだ。

創作には、近代バリ絵画の祖ウォルター・シュピースが大きく関わっている。

ケチャは奉納舞踊ではなく、娯楽として鑑賞されるもの。

レゴンも含めて、定期公演は奉納舞踊とは異なる芸能と考ていい。


ケチャは、大人数の上半身裸の男衆=ケチャ軍団が主役だ。

オイルランプの薄暗い明かりの中で、これまで耳にしたことのない合唱が繰り返される。

合唱に、ときどき手拍子が入る。

しばらくして、ケチャ軍団の組んだ円陣の中で、インドの古代叙事詩「ラーマーヤナ」の舞踊劇が始まる。

ラーマーヤナが主流だが、マハバラータを演じるグループもある。

ケチャ軍団の「チャッチャ」の掛け声は、本来は畑の中で聴くカエルの合唱だった。

「ラーマーヤナ」に猿の軍団が登場する場面で、猿を演じるところから、モンキーダンスと呼ばれるようになった、という説がある。

確かに、猿の声にも聞こえる。

演舞は、立ち上がったり寝転んだりして、独特な動きで森や波や猿を表現する。

物語の内容は理解出来なくても、その合唱とパフォーマンスは鑑賞に堪えられる。

世界に類のない幻想的な演舞に、ツーリストは酔いしれることだろう。

残念なのは、暗くて写真は撮りづらいこと。

雨がふると、屋内で上演されること。

ケチャの公演は、星空のもと寺院の境内がベスト。

ダラム寺院ウブドのロケーションは最高だ。

そうそう、サンヒャン・ジャラン(ファイヤー・ダンス)も必須だね。


ケチャ部門の順位を発表します。(8グループ)

一位・金曜日「ウブド・カジョ(Ubud Kaja)」ダラム寺院ウブド
二位・火曜日「ウブド・トゥンガ(Ubud Tengah)」バトゥカル寺院ウブド
三位・木曜日「サンバハン村(Sambahan)」プセ寺院ウブド
四位・水・土曜日「タマン・カジョ(Taman Kaja)」ダラム寺院タマン
五位・月曜日「ジュンジュンガン村(Junjungan)」デサ寺院ジュンジュンガン
六位・木曜日「スマラ・マディア(Semara Madya)」プリアタン王宮
七位・金曜日「パダン・スバダラ(Padang Subadra)」パダン・クルタ寺院パダンテガル
八位・日・水・土曜日「タルナ・ジェンガラ(Trena Jenggala)」クロンチン寺院パダンテガル


※特別寄稿「火曜日のウーマン・ケチャ」

先入観とは恐ろしいもの。

女性のケチャは、声に迫力がなく見応えしないだろうと、見くびっていた。

ゴメンナサイだ。

まあ男性ケチャだって、声量のないグループはいくつもある。

ケチャ軍団は、総勢50名。

観客数170名は、人気のある証拠だろう。

サンヒャン・ジャランは、今まで見たことのないテクニックだった。

いきなり、燃え盛る椰子柄殻の山に飛び乗った。

従来のように火のついた椰子殻を、すり足で蹴るのではない。

その後も火の上を歩く歩く。

火の上に座り込んでしまったのには、度肝を抜かれた。

こんな荒技のサンヒャン・ジャランは、初見だ。

見応えがあるよ。

そんなことで、評価はケチャ部門二位となりました。

動画でご覧下さい。




posted by ito-san at 03:12| Comment(0) | ウブド村帰郷記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする