バリには、ジャワ島から「カースト」を持ったヒンドゥー教徒が移り住む以前から、バリ島民がいた。
ジャワ文化に影響を受けず、古来からの慣習を守り続けている集落がある。
その村のことを「バリ・アガ」と呼ぶ。
「バリ・アガ」で有名なのが、カランアッサム県トゥガナン村。
グリンシン(縦横絣)を織る村として名が知られている。
村では年に一度、ウサバ・サンバ(Usaba Sambah)の祭礼が催される。
中央の長い建物には、グリンシンをまとった独身女性たちの美しい姿。
その前では、上半身裸の男性たちが棘のある葉を持って戦い合うムカレ・カレ(Mekare Kare)の奇祭が繰り広げられる。
この地域のバリ・アガ独特の木製巨大ブランコも見応えがある。
祭りの間、村に残る独特の響きを持つ鉄製ガムラン、ゴン・スロンディン(Gong Selonding)が村内で奏でられる。
知人から、トゥガナン村の祭礼が1月18日から22日まで5日間催されると情報が入った。
都合で、21日しか行くことができない。
スケジュールは、まったくわからない。
ムカレ・カレが見られたらいいなと、小さな期待を持って出かけた。
正午に下宿を出発した。
到着したのは、1時40分(所要時間:バイクで1時間40分)。
小さな展示館が完成し、入村するエントランスが観光地らしく整っていた。
入村料はドネーション。
ドネーション帳の記載には、Rp20,000-が多かったので、私もそれに倣った。
村内は静かで、祭礼が行われる雰囲気がまったくない。
家々に、ガルンガン祭礼日のペンジョールが飾られていない。
バリ・アガだからだろうか?
屋台でアクアを買い、コピバリを注文した。
縁石に腰を下ろし、コピバリを啜る。
スロンディンの調べは、聴こえてこない。
祭礼の開催は5時からだ、と村人が教えてくれた。
3時間は待てない。
村の最奥に、お気に入りのビンギン大樹がある。
気根がトンネル状になっているビンギンだ。
今日は、それを見て帰ろう。
ビンギン大樹を見たあと、写真を撮りながら村内を散策。
時間は4時になっていた。
あと一時間も待てば、祭礼が見られる。
雨が落ちてきた。
この間に、昼食を済ませてしまおうと考えた。
トゥガナン村近辺にワルンがないようなので、チャンディダサまで足を伸ばした。
雨脚が激しくなってきた。
この状態で、祭礼は行われるだろうか?
とりあえず、雨の中をトゥガナン村に戻った。
中央の長い建物に、正装の女性たちの姿が見える。
なんらかの祭礼が行われそうだ。
私は持つことにした。
いくつかの屋敷門から、着飾った若い娘たちが出てきた。
娘たちは一応に化粧が上手く、ツケマツゲが施されている。
足元には、カカトの高いサンダル。
時代の様変わりを感じる。
トゥガナン村独特の気怠いルジャン(Rejang)の奉納が始まった。
今回の祭礼が、どうも腑に落ちない。
帰宅してから、「地球に歩き方・バリ島」を開いてみた。
トゥガナン村のページのコラムに「ウサバ・サンバ」が載っている。
そこには、ウサバ・サンバは例年6月か7月に3日間行われるとある。
お祭りの期間はムカレ・カレやトランスダンスのほかにも、二日目の深夜にドラマゴン、三日目の夜にジョケッ・ブンブンで、おおいに盛り上がると記載されていた。
祭りの一週間くらい前から、村には露店が出て、とても賑やかになる。
闘鶏なども見ることができる。
もしかすると今回の祭礼は、それと異なるのではないだろうか。
「アパ?情報センター」のワヤン君に、次回の「ウサバ・サンバ」の情報を調べてくれるようにお願いした。