バリ島には、8つの県がある。
北の「ブレレン」、左周りに「ジュンブラナ」、「タバナン」、南に「バドゥン」、東隣に「ギャニヤール」、その東隣に「クルンクン」、クルンクンの北部に「バンリ」、東端が「カランアサム」。
この中で、海に接していない県がひとつある。
バンリ(Bangli)県だ。
私の滞在するギャニヤールの東隣に位置している縦長の県。
北部に、風光明媚なバトゥール山とバトゥール湖を有する。
珍しい儀礼の多い地域で、私は何度も訪れている。
奉納舞踊で幾度か参加させてもらった地域でもある。
県庁所在地は、バンリ市。
バンリ市には、バンリ王朝時代の国寺であったクヘン寺院(Pura Kehen)がある。
11世紀頃、スリ・ブラフマ・クムティ・クトゥ(Sri Brahma Kemuti Ketu)によって建立された。
市北部の小高い丘に、町を見下ろすように建っている。
境内のビンギン大樹は、樹齢600年。
大樹の胴回りは、私の目算でおよそ30メートル。
樹元に耳を当てると、水が吸い上げられる音が聴こえるようだった。
余談だが、アパ?情報センターのスタッフだったワヤン君をスカウトしたのは、クヘン寺院近くのダラム寺院の祭礼日だった。
通称ワヤン・バンリと呼んでいた。
ワヤン・バンリ君は今、インドのサイババから支持を得て、バンリ市にアシュラムを開いた奥さんのアシスタントをしている。
2月4日:久しぶりに朝から晴れ間が見えた。
このチャンスを見逃す手はない。
思い切って、ケヘン寺院のビンギン大樹に会いに行こう。
いざバンリへ・・・・・。
ウブドからバイクで40分ほどで着く。
祭礼のない平日、参拝客は私ひとり。
ビンギン大樹目指して、階段を上っていく。
闖入者に驚いた犬が、吠える。
大樹は今も、かつての姿を残し佇んでいた。
見上げる大きさと、気根の造形に圧倒される。
現在、壁に拒まれて一周することはできない。
以前訪れた時には、大樹の周りを一周できた。
その時に、話し掛けてきた老人の名前は「グデ・ライさん」。
幾人かの日本人に、ワヤンクリッを教えたと言っていた。
ウブドに戻りカセットショップを覗くと、グデ・ライさんのカセットが販売されていた。
ダラン(ワヤンクリッ=影絵芝居の演者)で有名な人とは知らず、バリ芸能について語り合った。
寺守りの村人にグデ・ライさんの消息を聞くと、「亡くなった」と悲しい情報が返ってきた。
線香と花を寺守りの村人に用意してもらい、奥の境内に腰を下ろす。
静寂の中でのお祈り。
合わせた両手の指先に花を挟み、眉間の前にもっていく。
神聖で厳かな涼風が頬を撫でていった。
ケヘン寺院は、アパ?情報センター:「古都バンリを巡る旅!」などのツアーで参加できます。
見どころは、ワヤンの登場神の石彫、樹齢600年を超える巨大バンヤン樹、壁に埋め込まれた中国陶器など。
何と言っても、心地よい風が心身を癒してくれる。
是非、ご利用ください。