あれから、まる4年が経ったていた。
11月19日、工事の進行状況が気になるので、出かけて行った。
ビスマ通りの南端を、ホテルの入り口を入るように右折する。
ホテルの脇を抜けて、数十メートル進むと道はぷっつりと途切れる。
橋はここから、対岸に架けられる。
対岸はカティランタン村じゃなく、ペネスタナン村かもしれない。
現場は、時間が止まっているかのように、4年前とまったく変わっていなかった。
渓谷を下り、竹の橋を渡る。
陸橋は、このあたりの上を通るのだろう。
この日、渓谷の戻り道で見たものは衝撃だった。
急坂の途中、野草に混じって鮮やかな朱色が目に入った。
形態は、キャベツか白菜に似ている。
私の知識には、そのくらいしか浮かばない。
よれよれの帽子をのせたような真紅の物体は、何だ?
初めて見る植物だ。
この真っ赤っかは、突然変異か?
触るのも、勇気がいる。
指先で触れてみるて、中は空洞のような感触。
あとで調べようと、写真に収めて帰った。

夜の「和食・影武者」で、写真を友人に見せると「ゾウコンニャクかもしれないね」という答えが返ってきた。
ネットで調べると、そっくりな画像がゾクゾクと出てきた。
間違いない。
英名:Elephant foot yam。
グロテスクなものは花だった。
花が、象の皮膚に似ているからこんな名前がついたのだろろうと思っていたが、どうやら塊茎(かいけい)の形がゾウの足に似ているのが名前の由来らしい。
開花するのも珍しいが、3日間しか寿命がないという非常に貴重な花だった。
こんな貴重な花なら、動画を撮っておいたほうが良いだろう。
1日おいて、21日に出かけた。
もしかすると、誰かに取られて、もう無くなっているかもしれない。
ありがたいことに、心配は危惧に終わった。
ゾウコンニャクは、私を待っているかのように佇んでいた。
しかし、開花期間が過ぎたのか、色はくすんでいる。
私が遭遇したのは、絶好のタイミングだったようだ。
花を押し上げると、中から雄花・雌花が見える。
雌花から悪臭がすると紹介されているが、鼻風邪だったせいか私には臭く感んじなかった。
今後、どう成長するのかは見届けたい気がする。
渓谷の急坂を通うには体力に堪える。
いっそのこと手元に置いておこうと、翌日22日には、あとさきも考えず塊茎ごと抜いてきた。
今、「和食・影武者」の庭にこっそり置いてある。

*インドの伝統医学"アーユルヴェーダ"では、ゾウコンニャクの塊茎に鎮痛、抗炎症、抗鼓腸、消化促進、媚薬、若返りと強壮作用があるとされていて、寄生虫、炎症、咳、鼓腸、便秘、貧血、痔、疲労といった広い範囲の治療に使用されるということです。