「引っ越しに良い日を指定してください」とお願いすると、パチュンは1月16日(木曜日)を選んでくれた。
バリには、建築工事を始めるのに良い日、入居するのに適した日、稲を植える日、木を切る日、などなどが暦によって決められている。私も、その慣習に従っている。
2012年内の転居予定が、トイレの増築に時間がかり延びてしまった。
予定は、あくまでも目標。だから予定が遅れるのは当たり前だ、というのは23年間の滞在で取得した。
おかげで、《第4回:うぶど大晦日恒例年越仮装大会》は、会場(カフェ・アンカサ)に近いトゥブサヨ村から出発できた。
大工さんは、テガランタン村で顔見知りの2人だった。
村人は儀礼でなにかと忙しい。「儀礼優先」のため、万障繰り合わせてとはいかない。
私は予算の都合で、バスタブは後日と言っておいたのだが、パチュンはバスタブを運び込んでいた。
想像以上に立派な私専用のカマール・マンディー(トイレ+ホットシャワー+バスタブ)が完成した(写真)。
カマールは部屋、マンディーは沐浴&水浴びの意味。
カマール・クチルは小さな部屋という意味でトイレ専用。
カマール・マンディーにトイレが付いていても、それはカマール・マンディーでいいだろう。
工事費の請求書を催促すると、「カマール・マンディーは、私が造りました」とパチュンは私の支払いを拒んだ。
どこまで親切な男だ。瞼の裏が熱くなった。
私専用のカマール・マンディーの水が出ない。水道の配管がジョイントされていないのだ。
「2〜3日、バリ・スタイルで我慢してください。伊藤さんは、バリ生活長いから大丈夫でしょう?」
満面の笑顔で、パチュンにそう言われると「ハイ」と頷くしかない。
バリ人の屋敷では、カマール・マンディーは不浄な場として家寺のある聖なる山側と反対の方角にある。
私の部屋からだと、20メートルほど歩くことになる。
洗面器を手にカマール・マンディーに向かう。
片隅に建つカマール・マンディーは、1.5メートル正方の小屋。内部に青いタイルが張ってある。
正面に座り込み便器と水槽、残りのスペースが水浴び場だ。一般的に他家でもこんな規模だと聞いている。
私に立派なカマール・マンディーを提供して、パチュンの家族は水槽に貯めた水をヒシャクですくって水浴びをしている。
今の私に、夜の水浴びはちょっと辛い。
申し訳ない気持ちと同時に、パチュンの家族に感謝した。
日本から「温泉の素」も届いていることだし、早く自宅のカマール・マンディーで温かいシャワーとバスタブを満喫したい。
バスタブ付き住居は、ニュークニン村以来だから5年ぶりだ。
深夜のトイレに部屋を出るのが億劫で小さなプラスチック・ボックスですませたことは、ここだけの話として内緒にして欲しい。

