「バンリのサイババ崇拝・壱(14)」からの続きです。
やっと本題に入ります。
ワヤン・スタモ君が、私の世話になっているパチュン家まで、車で迎えに来てくれた。
私は、バリの寺院に参拝する時の正装に身を包んで待っていた。
あいにく家族の姿が見えなく、ワヤン君は挨拶することができなかった。
今日の訪問目的は、ワヤン君夫妻が開設した「瞑想センター」の見学だ。
奥さんのイブ・アユ・ラクシュミには、アパ?情報センター「バリヤン体験・ツアー」の「スピリチュアル・ヒーリング」で世話になっている。
人気のツアーなので、一度、ロケーションを見ておこうと招待を受けることにした。
招待された住居は、新興住宅地の内にあった。
瞑想センター内に入る前に、履物を脱ぎ裸足になる。
15年の歳月の間に、神聖な寺院といった趣の住宅と立派な瞑想センターが完成していた。
文章でうまく描写することができないので、写真を添付することにする。
アパ?の「スピリチュアル・ヒーリング」は平日に行われている。
毎週日曜日には信奉者が集まって瞑想の日になる。
それを「アグリ・ホトラ=Agni Hotra」と呼ぶらしい。
私が訪れた日は、瞑想の日になっている日曜日だった。
見学だけで帰る予定でいたが、その場の雰囲気に流されるようにして、参加することになった。
老若の信奉者が男女左右に分かれて、小さな座布団に腰を降ろした。
私は、信奉者の一番うしろに席を取った。
午後5時過ぎ、イブ・アユ・ラクシュミが登場すると「アグリ・ホトラ」儀礼が始まった。
グル・ラクシュミが、右手に持った鈴を激しく鳴らした。
霊媒師を想像させる仕草だ。
マントラを唱える大きな声が、左手に持つマイクを通して聞こえる。
呪文のようにマントラを繰り返す。
マントラを唱えると、サイババからお告げが降りてくるという。
宗教に興味がない私は、こういう場所が苦手だ。
「えらいところへ来てしまった」と動揺する。
辞退した気持ちはいっぱいだが、今日はワヤン君の送迎つきなので、途中で帰るわけにはいかない。
最後まで見届けてやろうという、中途半端な好奇心もわいてきている。
グル・ラクシュミが誕生日の歌を唄う。
私の知っている通俗的な歌だった。
信奉者の子供の誕生日儀礼のようだ。
ケーキの上のロウソクが1本のところをみると、1歳の誕生日なのだろう。
グル・ラクシュミに相談をしてから、子供が授かった夫妻の長男だという話。
聖水の振りかけて、誕生日の儀礼は終わったようだ。
遅れて来た信奉者が、私のうしろに座る。
60人ほどが集まっていた。
多い日には150人ほどになると、ワヤン君があとで教えてくれた。
信奉者のひとりがマイクを手にして、マントラを唱える。
鳴りものが入る。
参加している全員が手拍子を打ち、マントラの合唱を始めた。
全員がマントラを唄うことができるようだ。
私の耳に聞き分けられるのは「オーム」と「シャンティ・シャンティ」だけだ。
歌詞がわからない私には、霊歌のようでもあり、祈りのようにも見える。
お金を聖火に投じて燃やす場面もある。
聖火信仰=護摩(ホーマ)祈祷のひとつなのだろうか。
疑問ばかりが浮かぶ。
サイババを骨格にしたヒンドゥー教のようなものであり、その亜流の新興宗教にも見える。
奇妙な歌は、続けられる。
しかし、ある種の厳粛さを醸し出している。
隣のうら若き女性は、涙を流していた。
ヴィプーティ(聖灰)を頂き、こめかみに付ける。
儀礼は、8時過ぎに終了した。
信奉者たちは皆、高揚感と浄化された清々しさとがないまぜになった顔をしている。
グル・ラクシュミは、3時間、唄いっぱなしであった。
信奉者が一列に並び、順にサティア・サイババの写真が飾られた祭壇のある部屋に入りお祈りをする。
最後に、私は部屋に招き入れられた。
ワヤン君とともにお祈りをする。
聖盃から滲み出て来ると教えられた「アムリタ(聖なる蜜)」を頂いた。
ヴィプーティは、祭壇裏に飾られた額縁のガラスに自然に浮き出てくらしい。
摩訶不思議なものを見せてもらった。
興味ある体験ではあるが、疑問は残る。
訪問する前は「アグリ・ホトラ」儀礼ツアーを考えていたが、果たして、日本人はこういうものを好むのか、心配になってきた。
ワヤン君夫妻が主宰なので応援したいのだが、どうしても違和感は拭えなかった。
2013年07月17日
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