「Discover Indonesia《 タマン・ヌサ=Taman-Nusa 》」
ギャニアール県の東端、北へ数キロでバンリ県、川を隔ててクルンクン県という県境に、新たにオープンする観光施設の名称だ。
Nusaは、祖国、島を現すインドネシア語。Tamanには、完全な、遊園地、熱心と3つの意味があるが、ここでは遊園地と考えていいだろう。
コンセプトは、インドネシアの国家標語である「多様性の中の統一」だと思われる。
一万数千もの島々からなるインドネシアは、日本の約5倍の国土を有し、300以上の民族と部族語とに分かれると言われている。
同じ島内でも、山をひとつ越えるだけで言語がまったく違うことをインドネシア国内の旅で、私は体験している。
この多数の民族をひとつに結びつけるのが「多様性の中の統一」。
ひとつの言語、ひとつの文化、伝統を強要するのではなく、お互いの相違を理解し、それを基礎にして新たな国家、文化を創造していくのが、この標語の理念だ。
スバリ村のグスティ君がオープン前の見学をオーナーから招待を受けていて「一緒に行こう」と私が誘われた。
お互いの都合の良い7月7日(日)に、出掛けた。
オーナーのサントーソ氏は、ジャカルタ出身の中華系インドネシア人だった。
案内は、クトゥ村に在住している長男ロベルト君がしてくれた。
7月10日オープンと聞いているが、建築途中のところが目立つ。
これは突貫工事をしても、10日には間に合わないのではないかと、人ごとながら心配になる。
★ステージ・スペースになる建物の屋根は、トランプのスペード型をした「シリーの葉(Daun Sirih)」の意匠が、薄鉄板を溶接して葺かれていた。
シリーは、インドネシアの各地に古くからある嗜好品で、神聖なものと考えられ、今でも祝宴には饗される。
バリでは、大きな儀礼には、供物として神々に捧げられる。
★未来をテーマにしたパビリオンは、椰子の葉の細く固い芯の部分・リディ(Lidi)をまとめで作った「ほうき=サプ・リディ(Sapu Lidi)」をデザインしたものだった。
サプは、ほうきの意味。バリ語では、サンパッ・リディ=Sampat Lidiと呼ぶ。
リディには教訓がある。
「Lidi sebatang mudah dipatahkan, tetapi sapu seikat tak mudah dipatahkan.」
(一本の椰子の葉の芯は折れやすいが、まとまってひとつのほうきになれば折れ難い)
民族の結束を願望した教訓をシンボルに用いたようだ。
解説するロベルト君の顔には、充実感が満ちていた。
「タマン・ヌサ 」のマネジャーとして自覚がそうさせるのだろう。
私は「日本にもそれと似た言葉があるよ」と、
一本では脆い矢も束になれば頑丈になるということを示し、三兄弟の結束を強く訴えかける、毛利元就の「三本の矢」の逸話を伝えた。
★バティックとワヤン・クリッの展示館は建築途中たった。
サントーソ氏の膨大なコレクションなのだろう。
★印のパビリオンは、建築途中のため写真を撮っていない。
ここから先には、インドネシア各地の独特の建物、60以上の民族家屋が再現されている。
こちらは9割かた完成していて、調度品が揃っている家屋もある。
100年前の家屋を移設したと説明されたが、村落によっては現在でも使用されている家屋だ。
バリ島以外には、ジャワ島、ロンボク島、スンバワ島、フローレス島、スンバ島、スラウェシ島を旅をしたことがある私の記憶に残っている民族家屋もある。
入場料がドル建てということは、対象は海外からの観光客か。
ロベルト君に、ローカルの入場料を尋ねたが、考慮中という答えだった。
「タマン・ヌサ 」でインドネシア各地の施設を見ることができてしまえば、インドネシア国内を旅行する人が減るのではないかという考え方も生まれてくるだろう。
2ヶ月の滞在ビザでは、日本の約5倍の国土を持つインドネシア全土を観光するのは難しいので、お手軽な「タマン・ヌサ 」ですましてしまえというツーリストも現れるかもしれない。
私も初めはそう考えていた。
しかし現状は、情報があまりにも少なく、現地まで行くツーリストは少ない。
逆に「タマン・ヌサ 」を見学して興味が惹かれ情報を得て、旅をしようと考える人が増えるのではないかと考えを変えた。
私としては、現地に行って肌で感じて欲しいのが本心だが、今は、これもありかなという思うようになった。
そんな意味では、コンパクトにまとまった「タマン・ヌサ 」は、有意義な施設かもしれない。
愛知県の犬山市に「野外民族博物館・リトルワールド」がある。
一周2.5kmの周遊路に沿って、世界の民家を移設・復元している。
園内は、異国情緒いっぱい。
建築物のうち、歴史上にも文化芸術上にも価値があるものを末永く保存する事業だ。
「タマン・ヌサ 」も、そんな役割を担った施設の一つだと考えている。
ロベルト君は、私の質問にひとつひとつ丁寧に答えてくれた。
残念なのは、私の語学力不足で充分に理解できなかったことだ。
「日本語の説明書を販売してください」と、私は私のために頼んだ。
園内一周、約一時間。
すべてのパビリオンを見学するとなると、3時間のコースになるだろう。
折り返し地点にカフェ・コーナーも設けられ、決して無理なコースではないだろう。
完成が待ちどうしくなってきた。
後日の情報では、無理だとしか思えなかった7月10日オープンを死守したようだ。
私には中途半端なオープンとしか考えられない。
★営業時間:8.30am〜17.00pm/
★入場料:50US$(大人)/25US$(子供)/ローカルRp150,000-/
★TEL:+62-361-952952/
★FAX :+62-361-953005/
★Email:sales@taman-nusa.com/
★Web:www.taman-nusa.com/
帰路では、街道沿いにあるローカルに人気のワルン「Rumah Makan TALIWANG」に立ち寄った。
もちろん、タリワン=TALIWANG(Ayam Bakar)セットを注文。
2013年07月24日
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