昨夜のことだ。
「今夜、バロンのジャランジャランがあるよ」と、プチュン君が教えてくれた。
ひと月前(11月2日)に、クニンガンが終わった。
ガルンガン&クニンガン関連のバロンのジャランジャランではないようだ。
私のカレンダーに、心当たりのウパチャラ(儀礼)はない。
「何のウパチャラがあるのかな?」と、訊くと。
「毎年、サシ・カリモの最終日のティラム(Tilem=暗月)に行われるムチャル(悪霊払い儀礼)ですよ」
バリの慣習を伝えられることが嬉しいのか、誇りを持った顔でパチュン君は答えてくれた。
ムチャル(Mecaru)は、地下界に棲む悪霊ブタ・カロに対する浄化儀礼のこと。
サシ・カリモは、サコ暦の第5番目の月(西暦の10月〜11月頃)のことで、翌月はサシ・ カナム (第6番目の月)で雨が降り始め、暑くなってくる。
雨季の到来である。
疫病が流行った時代の名残からか、バリ島では、雨季の前にすべての村でムチャルが行われている。
ムチャルは、地域によって名称が異なることもある。
テガランタン村ではムチャルでいい。
今夜は、霊力が強いと言われるカジャン・クリオンの日が重なった。
夜7時、バレガンジュールの音が我が家に近づいてきた。
バリの正装に着替え、カメラを片手にテラスに出た。
いつもならこの時間、ドゥダルが異常発生するのだが、今夜は不思議に出ていない。
もし、ドゥダルが飛び交っていたらどうするのだろう?
彼らのことだから、慌てることもなく「あら、あら!」という感じで、やり過ごすのだろうな。
道路に出ると、そこには、白い正装に身を包んだ若者たちが腰をおろしていた。
若者たちは、バレガンジュールの演奏隊だ。
その中に、コマン君(パチュン家の次男)の姿も見える。
右手・南を見ると「ルアック・ウブド・ヴィラ」前の道路に、ススオナン(寺院のご神体)であるバロンとランダがこちら・北を向いて並んでいた。
安置されている寺院の祠から持ち出されたススオナンは、ムチャル儀礼で祀られる。
村人は、ススオナン前の路上に腰をおろして、お祈りの最中だ。
こういう風景、バリらしくていいね。
私は最後列にしゃがんだ。
昼間の太陽の余熱が、お尻に伝わってくる。
すでに、村の北入口のムチャル儀礼は終えている。
このあと、村の中央にあるダラム寺院に戻り、お祈りをする。
今、テガランタン村の各家は、人っ子一人もいない状態だ。
遠くからバレガンジュールの音が聴こえる。
寺院から戻ると、私の右手首にも、魔除けの紐をつけてくれた。
私も、バリ島の悪霊からプロテクトされたのだ。
ニュピ前夜の締め括りムチャルとは違った緊張感のムチャルだった。
15日後の満月にも、ムチャルは行われる予定になっている。
17日の火曜日だ。
コンディションが良ければ、参加しようと考えている。
2013年12月03日
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