いよいよ帰国の日が来た。
息子の嫁に、土産を買っていないことに気づく。
ボテロ美術館の開館と同時に、ボテロショップに駆け込んだ。
おむつを持って運ぶに便利な、大きめのバックに目星をつけていた。
肥満のモナリザが描かれたバッグが欲しかったが売り切れだった。
母子の絵のバッグを購入。
ホテルで予約したタクシーに乗って空港まで(料金:28,000ペソ)。
飛行機はエアーフランス、午後5時40分発。
チェックインをすませた。
順調に進んでいる。
関門は、出国カウンターだ。
このままスムーズに行ってくれ。
拝むような気持ちで、前に立つ。
「終わりよければ、すべて良し」
しか〜し、無惨にも最後の最後に大波乱。
五分五分の確率だと思っていたが、しっかりオーバーステイとなってしまった。
まずは、出国カウンターで足止め。
じっくり見てくれれば、エクアドルでの出入国スタンプを見つけて、通してくれるだろうと安心していた。
係官は、いたずらを見つけた悪ガキのような顔でパスポートを持った掌を左右に振っている。
私の顔を凝視しない。
オーバーステイの説明もしない。
管轄官と思われる上司のブースに連れていかれた。
身に覚えのある私は、素直に従った。
上司は、私はおろかパスポートも見ずに、係官に指示をする。
別室に行きだ。
覚悟はしていたので、最悪でも罰金ですむだろうと楽観している。
別室のガラス越しに、女性の係官からオーバーステイの宣告を受ける。
私は、エクアドルに2日間出国したことを説明する。
まだ、逆転のチャンスがあると信じている。
逆転のチャンスがあると信じている。
言葉が通じないということもあるが、係官はまったく聞く耳持たず。
「書類を作るのに一時間以上の時間がかかります。あなたの飛行機の出発には間に合わないでしょう」
それは困る。
罰金がいくらかかってもいいと覚悟をした。
とにかく、予定の飛行機に乗りたい。
「お金は払いますから出国させてください」と頭を下げる。
「すぐに航空会社に行ってチケットの変更をお願いしてください」航空券がガラス越しに押し出された。
お前は、地獄の閻魔かと罵りたくなる。
まだ、あきらめてはダメだ。
航空券を受け取っては、地獄に堕ちたも同然だ。
パソコンの画面に、日本語で「落ち着いてください」と表示されていた。
彼女は、努力をしてくれている。
私は、落ち着いた仕草をした。
「あなたは、オーバーステイしたことを理解しましたね」
念を押され、私が承認すると「それでは書類を作ります」となった。
もしかすると搭乗に間に合うかも。
一縷の望みができた。
彼女が、救世主か天使のように思えた。
オーバーステイは一日だった。
エクアドルで、もう一泊滞在を延ばす必要があったかもしれない。
罰金は、354.392ペソ(約16,000円)。
ミグラシオンでは、現金を受け取らない。
カードしか使えない。
私はカードを持っていない。
日本からの振込もダメ。
振込は、コロンビア国内から。
そこで、係官から提案があった。
「コロンビアにいる知人に立て替えてもらいなさい」
これはジュンペイさんを指している。
世話になっていた人の住所を書く欄があり、そこに彼の名前を書いてしまっていた。
「出国から10 日以内(書類には10月14日)にミグラシオンに支払ってください、と知人に頼むように」
「支払いがない場合、コロンビアの再入国はできませんので注意してください」
ここで逆らっては駄目だ。
帰国したいため、迷惑がかかることを承知で承諾した。
地獄の閻魔大王と天国の天使の二役をこなす、ミグラシオンの女性の係官。
本当の姿はどっちなんだ。
単なるイジメだったのかもしれない、と勘繰ってしまう。
出発まで、残り10分。
ボディチェックゲートの向こうに、エアーフランスのスタッフが困り顔で私を見ていた。
搭乗ゲートは、一番端。
走る走る・・・
飛行機には、滑り込みセーフだった。
なにはともあれ、機上の人となった。
顔が自然にほころんでいる。
南米コロンビアの旅・完