今年のニュピ(3月9日)は、タバナン(Tabanan)県の山深い村で過ごすことになった。
ニュピを挟み、2泊3日の未知の旅。
友人のスタッフであるデワ君の実家に世話になる。
出発は、8日。
午前10時を少し過ぎた頃、友人の車が迎えに来てくれた。
ププアン・パジャハン村(Pajahan Pupuan)は、ウブドから車で2時間半ほどの距離。
タバナンの町を抜け、曲がりくねった尾根伝いの道を進む。
熱帯の森を左右に見ながらのドライブは、心地よい。
家々の玄関に、しめ縄に似た飾りが取り付けられている。
ニュピのための飾りらしい。
タバナン県特有の風習だろう。
美しい棚田を望みながらコーヒーブレイク。
ウブド近郊では見られない風景だ。
ププアン町のワルンで、昼食のナシ・チャンプール。
パジャハン村に到着したのは、午後2時。
デワ君の持っているコーヒー農園を見学に出掛けるつもりだったが、雲行きが怪しくなったので明日に変更となる。
午後3時頃から、雨が降り出した。
ここは、雨の多い地域らしい。
ニュピ前夜は、オゴホゴ神輿の行列がある。
「オゴホゴ」http://informationcenter-apa.com/kb_ogoh_ogoh.html
オゴホゴ神輿は、ニュピ前夜に行われる悪霊払いの儀礼。
これまで私が見てきたオゴホゴ神輿の行列は、6時頃から始まっていた。
6時には、まだ時間がある。
私は持って来たhang drumを叩くことにした。
バレ・ダジョーのテラスに腰をおろし、雨垂れのすだれを相手に音を出す。
濃密な音が響いた。
山あいの空気のせいか、雨の湿気か、いつもと違う音色になった。
♪・・・・♬
遠くから、バレ・ガンジュールの音が聴こえる。
時間は午後4時。
雨は上がっていた。
オゴホゴ神輿の行列が始まったとも思えないが、音の聴こえる方に行くことにした。
村の中心と思われる三叉路で、オゴホゴ神輿が行進している。
雨の都合で、早くなったのか?
オゴホゴ神輿は、三叉路から三方向の村はずれに行進し清めの儀礼を行う。
ウブドの豪華なオゴホゴとは違い、小さな村の小さなオゴホゴだった。
明るい時間のオゴホゴは、悪霊っぽくない。
日没時間に、ススオナン(バロン&ランダ)が、オゴホゴ神輿同様に村を練り歩く。
三叉路で僧侶の読経が始まった。
ススオナンが村々を清めている間に、村に結界を張る僧侶たち。
私は沿道に腰をおろした。
昼と夜の境目、3人の僧侶のマントラで村の空気が変貌していく。
ススオナンが三叉路に戻ってくる。
先頭集団の数人がトランス状態で踊っている。
これもウブドでは、見られない儀礼だ。
突然、目の前をランダが走り出した。
私の全身から鳥肌が立った。
闇の世界にでも持って行かれそうな感覚に、急いで、その場から立ち上がった。
まわりから嬌声が上がる。
ランダを押さえる者、トランス状態の者。
狭い道に村人が溢れ、騒然となる。
これは、トランス儀礼だ。
私は、この場に居るようで居ない取り残された存在となった。
このあと、再びオゴホゴ神輿の行列が行われた。
パジャハン村では、明るい時間と暗くなってからの2度行われる。
これもこの村特有の風習だろう。
午後9時、すべての儀礼が終了した。
山あいの小さな村で行われた不思議な儀礼でした。