インドネシア政府は9月下旬、アグン山の火山性微動の回数が増えたことにより危険度指数を上げた。
この時点から、バリ島の観光客が減り始める。
11月21日、アグン山が1963年以来の噴火。
一時は空港閉鎖で観光客が混乱。
そして、観光客が激減。
現在は、小規模噴火はあるものの、小康状態が続いている。
バリは、観光で成り立っている島。
ツーリストの減少は、経済にダイレクトに影響を及ぼす。
12月の某日、知人からメールが入った。
「今、私の店にジャカルタの通信社の方が見えていて、アグン山の噴火について、伊藤さんに話を伺いたいと仰っています。
夜、影武者に行くと言ってますが、よろしいですか?」
私の知識が参考になるとは思えないが、「和食・影武者」には、毎夜9時前後には居るので、その旨を伝えた。
1日の締めくくりは影武者だ。
影武者に顔を出すと、日本人男女と立ち話をしている爽やかな身なりの青年が目に入った。
この男性が通信社の方だ、と私の感は教えてくれた。
日本人男女は、知人のカメラマンのAさんと、宿を営んでいるA子さんだ。
しばらくして、彼らが帰ることになったのだろう、私のテーブルに青年が近ずいてきた。
「伊藤さんですか? ジャカルタの通信社の者です。お話を伺いたいので、同席してもよろしいでしょうか?」
どうぞどうぞ、ということになって話が始まった。
アグン山噴火で、今のところ死者はでていない。
被害を受けている地域も少ない。
そんなことで、緊張感も薄い。
ウブドにいるからそう感じるのかもしれない。
アグン山の噴火についてと聞かれても。
立場によって、意見がそれぞれ違ってくる。
それもわかっての質問だろう。
私が滞在するウブドは、火砕流、火山ガス、火山灰の降灰などの心配ない地域とされている。
今のところ、まったく被害を受けていない。
近くて遠いのか、実感がともなっていない。
現場近くに住み被害を受けている人々の気持ちは、想像もできない。
励ましの声を掛けることはできるが、それは何の手助けにならないだろう。
そんな私の考えが、紙面に載るのは控えたい。
自己紹介のあと、私は。
直接、被害を受けている人々、
それ以外の地域のバリ島民、
現地の人と結婚して住んでいる外国人、
ツーリストにも長期滞在者と短期旅行者といる、と話を始めた。
いつでもこの地を離れられるという気持ちのツーリストと現地の人とは、根本的に受け止め方が違う。
私はツーリストで、やはり最悪の場合は島を離れるだろう。
こんな風に説明して、噴火についての話を避けた。
青年は、シビアな内容は望んでいなかったようで、質問の矛先が変わった。
「どうしてウブドに住み始めたのですか?」
よくある質問。
彼も、インドネシアが好きで選んだ仕事らしい。
途中から、大原さんも加わって昔話になる。
最後は、ツーリスト同士の会話で落ち着いた。
通信社の青年に話さなかった、私の思い。
今回の噴火、私はバリ島の浄化と受け止めた。
観光地バリは、自然を壊しながら発展してきた。
もうこれ以上、自然を失くすな!
山岳信仰でもあるヒンドゥー・ダルモ。
そんな発展に、アグン山がレッドカードを掲げたのだ。
「これまで壊してきた自然を再生する時期だ」とバリ人の知人は言う。
繁栄のあとは破壊だ。
そうして創造、新たにやり直そう。
これが、バリ人の宗教観だ。
そう信じているようでもある。
自然を保護した、バリらしい発展を探そう。
噴火の被害を受けている人々に・・・
観光客激減で影響を受けている人々に・・・
今は、アグン山が鎮まるのを、ただ祈るしかない。
鎮まったあとは、バリ島の正しい再生に力を注ごう。
これもツーリストの無責任な発言かも。
「オーム・サンティ・サンティ・サンティ・オーム」
いつも拝読させて頂いております。
何年も前から毎回拝読しながら、一度もコメントもイイねもしていない悪い読者の一人です。
今までにも心打たれる記事が沢山ありました。
しかし、今日は、コメントしたくて仕方なくなりコメントさせて頂きました。私は6年程前からバリに行かせてもらうようになり、バリ人の友人もでき。仲良くしてもらっています。バリ人の友人の多くは観光業のため、今、ジワジワと危機が迫って来ております。だがしかし、みんな逞しく生き、そしてやはり、バリ島は汚れ過ぎてしまったから浄化されるのだ、だから仕方ないと言っています。儚く美しく弱く逞しく。やはり私はバリが好きです笑
少し前に日本国内で永田敏章さんとご一緒する事があり。伊藤さんのブログの大ファンだと私が話すと、お知り合いだとお聞きしました。タイミングを合わせて一緒に影武者に行来ましょうとなっています。その時は、ツーリストの大先輩、宜しくお願いいたします。塚本真司
コメント、ありがとうございます。
バリがバリらしく、復活してくれることを祈るのみです。
永田さんとは、長い付き合いです。お会いできることを楽しみに待っています。