略して「S・I・M=シム」と言っている。
以前、普通車(A)とバイク(C)の免許証を持っていたことがある。
ギャニヤール警察署で取得した、一年間有効の運転免許証だ。
手続きが今ほど難しくなく、筆記試験も実地試験もアンダーマネーでクリア。
身長が165cセンチに縮まって、なんと WANITA(女性)になっていた免許証を手にして驚いたのを覚えている。
「これで、大丈夫ですか?」係官に聞くと、
「ティダ・アパ=問題ない」バリならではの答えが返ってきた。
私には問題があるんですがね、とは言えず。
これから一年間、女性として生きていかなければならないのか、と戸惑った。
幸い、他人に運転免許証を提示する機会も訪れず、一年が過ぎた。
1998年に切れているから、かれこれ20年前の話。
あれから今まで、無免許で走っている。
これまでは、ウブド近辺と警察の検問の比較的少ない地域にしか出かけなかった。
今回、運転免許証を取ることにした。
もう少し、行動範囲を広めたいと考えての行動だ。
そして、先週(9日)のこと。
リタイヤメント・ビザを受け取ったあとに、行ってきました警察署。
取ってきましたよ、C免許。
有効期間5年。
取ってきたというよりか、お金を払ってもらってきたという感じですがね。
居住するギャニヤールの警察署に出向くのが通常だが、ビザ代行業者のコネクションがある州都デンパサール警察署におもむいた。
ギャニヤールで取得した知人から、4時間ほど待たされると聞いていたし、書類の用意も面倒そうだ。
不正なことが嫌いな私としては常道ではないが、今回は袖の下に紛れることにした。
個人情報をパソコンに入力する担当者が不在で、しばらく待たされたが、業者の計らいで短時間で終わった。
数人の先客がいたコーナーも、スムーズに順番が来た。
右手親指の指紋を押して、写真を撮られてサインをして終了。
お礼を言って席を立ち、一階に降りて別棟に入ると、受付には、すでに私の免許証が用意されていた。
ハイテクのスピードだ。
筆記試験も実地試験もない。
本当はあるのだろうが、私は免除されたのだ。
どうしてかと言うと、多額のお金を払ったからだ。
外国人価格の限度額を超えていた。
警察署に「袖の下事業部」でもあるのか?
この話、内緒にしていてくださいよ。
バレると免許証を取り上げられたり、逮捕されるかもしれないから。
これでクルンクン方面にも安心して出かけられる。
と言うのは、以前、パダンバイ港に行く途中で、警察署前に立っていた警察官に止められたことがある。
ヌサペニダ島出身の友人は、先に行ってしまった。
その時の私は、何を聞かれても「ウブド・ウブド」を連呼して、言葉の通じないふりをした。
警察官は、あきれたように「もう、行ってよい」と、犬を追い払うように右手を振った。
こうして事なきを得たが、小さなプライドは傷ついた。
数年後に、同じ場所を通った。
2人の警察官が立っていたが、止められなかった。
いつのまにか通り過ぎていた。
警戒心がなかったので、警察官も見逃したのか。
この時は、免許証を持っていた年。
以前の屈辱を清算したかったのか自慢したかったのか、私は後戻りをした。
警察官の前にバイクを止め、自信満々に免許証を提示した。
免許証を見つめる目が、こころなしか微笑んだように思える。
「WANITAとなっているけど、私は女性じゃないからね!」
女性となっているのは気にしていないようだ。
身長165cセンチも問題ない。
では、この薄ら笑いはなんだ。
突っ込みどころを見つけたのか?
・・・・・・・・・・沈黙。
「この免許証、期限切れてるよ」
え〜〜〜!
免許証の期限切れには、気がつかなかった。
「俺、2人の子持ちなんだ!」警察官の声。
それがどうした。
「俺にも、2人の子持がいるんだ!」もうひとりの警察官の声。
気の優しい私は、彼らの子供のために、義援金を渡して見逃してもらった。
『持ちつ持たれつ』インドネシアの体質が、こんなときは助かる。
しかし、私の正義感はズタズタに傷ついていた。
それにしても、バカだよね。
ワザワザ戻って無免許を暴露し、アンダーマネーを請求されるとは。
こんな経験がしたくないから、免許証を取ることにしたのだ。
有効期間5年、期限切れは当分ないので、後戻りをしてでも運転免許証見せるゾ。
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