これが最後の報告になることを期待して、アップします。
「いやいや、もうチュクップ(cukup=インドネシア語で充分に意)です」
こんな声が聞こえてきそうですが、まあ聞いてください。
毎度の夜の影武者でのこと。
銀行に出向いても、カードは発行されなかったという話をした。
その場のみんなは、「それは、怒らなければいけないよ」一応に言う。
怒れば、銀行側も困って発行してくれるというわけだ。
6月26日:「3度目の正直」
この諺が、ふさわしいかどうか不安ですが、とにかく3度目の銀行詣でです。
今回の私は、怒るゾと心に決めて部屋を出た。
銀行には、午前10時に着いた。
今日も、人で埋め尽くされている。
整理番号は528。
番号は、500から始まっているにだろう。
電光掲示板に表示されている番号は516。
かなり待たされるだろうと、覚悟した。
運良く、一番前の長椅子の左端が一人分あいていたので、腰を下ろした。
いつもなら待ち時間を利用して本を読むのだが、今朝は早く起きたのでまだ眠く、本を取り出すのをやめた。
どう怒るか、を考えることにした。
他人に怒りをぶつけることは得意でない。
怒りは、いつの間にか自分にも原因があるかもしれないと考え直している。
デビットカードをATMに飲み込まれてしまったのも、私の落ち度かもしれない。
自分に自信がないのだ。
時間が経つと、許している。
どうせ、私のインドネシア語や英語では通じないだろう。
演技で怒ってみようか。
待ち時間が1時間を過ぎた。
エアコンで身体が冷えてきた。
風邪をひきそうだ。
私の番が回ってくるまでは、まだは時間がかかるだろう。
さらに30分が過ぎると、トイレに行きたくなった。
順番は、あと6人目。
今トイレに立つと、戻ってきて座るところがなくなっているかもしれない。
立って待つのは辛いので、ギリギリまで座っていることにした。
電光掲示板の数字が525番になったが、そこから、先になかなか進まない。
辛抱できなくて、トイレに立った。
トイレから出ると、電光掲示板の表示が530と変わっている。
私の番号が飛び越えられた。
先客が座っているカウンターと銀行員のいないカウンターがある。
幸い、先ほど座っていた席が空いていた。
もう一度、腰を下ろした。
空いていたカウンターに、女性銀行員が座った。
私は席を立ち、整理番号528を見せた。
女性銀行員に「デビットカードを再発行したいのですが」と告げる。
「それで?」と言う顔をされたので、カードが戻ってこなかったことを説明した。
「では、デンパサールの本店に電話をして確認してみますので、しばらくお待ち下さい」丁寧な対応。
この段階で、私は怒る気力は失せていた。
彼女は席を外し、本店とコンタクトしたのかどうかはわからないが、しばらくして戻ってきた。
「調べるのに時間がかかるので、紛失届を提出したほうが早いですよ」と提案された。
「紛失届は、銀行が出してくれるのですか?」
「いえ、あなたが警察に行ってもらってきてください」
私がなくしたわけでもないのに、なぜ、私が警察に出向かなければならないのか。
警察は、なぜか緊張するので行きたくない場所だ。
グズグズしていて、書類作成に時間がかかるだろう。
ここは、怒ってもいい場面ですよね。
「今から警察に行って紛失届の書類を申請して、来週、出直して来るのですか?」不満を含んだ言葉で言ってみた。
「警察はすぐに作ってくれます。今から行ってください。戻ったら、私を指名してください」彼女はニッコリと微笑んだ。
「私は言葉ができないので、手紙を書いてください」ささやかな抵抗をした。
彼女は、メモを書いてくれた。
私は素直に、ウブド警察署に向かった。
警察署には昨日、大原さんに付き合って20年ぶりに来ているので、今日は緊張も少ない。
受付カウンターでメモを見せると、ベンチに座っていた男性が私を部屋に案内した。
書類はスムーズに出来上がった。
お礼も受け取らなければ経費も受け取らない、クリヤーな警察になっていた。
銀行に戻り、再び彼女のカウンターに着く。
時間は、昼12時を大きく回っていた。
「昼食はすみましたか?」彼女に、こんなことを聞く余裕ができている。
「私は、先ほどすませました。あなたわ?」
525から番号が進まない時に食事をとっていたのだろう。
私はまだですと答えると「飴でも食べてください」とカウンターの隅ある飴の入った器を指差した。
こんな会話をしながら、カードは速やかに作られ、再発行が完了した。
「テレマカシ!」と声をかけて席を立つ。
ガードマンに手伝ってもらい、新しいカードに、新しい暗証番号を登録した。
こちらの銀行のガードマンは、受付の役目もするのだ。
こうして、私のATM問題は、解決したのであった。
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