2019年03月05日

ニュピ(Nyepi)について考察(298)

今回は「ニュピ」についてのウンチクを少々語ります。

ウンチク(蘊蓄)の漢字が、読めない書けないので、カタカナにしました。

バリ島民は、世界共通の西暦(グレゴリオ暦)のほかに、古くから伝わる独自の暦を使っている。

それは、宗教儀礼や日々の供物を捧げる時の大切な目安となっている。

独自の暦には2種類あり、ひとつをウク暦、もうひとつをサコ暦と呼んでいる。

1343年、バリはマジャパイト王朝によって征服され、16世紀のゲルゲル王朝時代に、ジャワ・ヒンドゥー文化の影響を強く受けるに従い、ジャワ・バリ暦と言われるウク暦が中心となっていった。

征服される以前に建立された寺院の多くは、サコ暦に従って祭礼が行われている。

サコ暦は、インドが起源と考えられ、「釈迦」に由来するとも言われる。

西暦78年(79年という説もある)が元年とされ、例えば、今が西暦2019年だどとすると、78を引いた数サコ暦となる。

今年は、サコ暦の1941年。

サコ暦の1年は、353日、355日あるいは356日で巡ってくる。

ひと月は、約29日半なので、数年に1度のうるう月がある。

1年は、12のサシー=月(sasih)に分かれている。

うるう月では足らないので、何年かごとのうるう月を設けている。

2016年には13ヶ月あった。

第11番目の月・Sasih Jiyestha(雨季の終わり)と、第12番目の月・Sasih Sadha(乾季の始まり)の間に、「Sasih Mala Jiyesta」

ニュピは「サコ暦」最大の祭礼のこと。

月が隠れる・暗月(ブラン・ティラム・bulan tilem)の翌日から新しい月が始まり、次の暗月までをひと月とする。


満月と暗月の日には、普段より多めに供物が捧げられる。

サコ暦は太陰暦で、月のサイクルに合わせた暦。


第1番目の月(Sasih Kasa =サシー・カソ)は、西暦の6月頃。

第7番目の月(Sasih kepitu=サシー・クピトゥ・西暦の12月頃)の暗月前日に行われる祭礼が「Hari Siwaratri(シワラトリ)」。

第10番目の月(Sasih kadasa=サシー・カダソ)の第1日目が、ニュピとなる。

雨期の終わる、西暦の3月か4月に巡ってくる。


1年の穢れを払い浄める祭儀が、ニュピだ。

ニュピ前日の暗月の日に、冥界のヤマ神が大掃除をするので、悪霊ブト・カロ(Bhuta Kala)が地界から追い出され、地上にはい出て来る。

バリ中のすべての村の公共広場では、僧侶によるムチャル(悪魔払い)儀礼が執り行われる。

ウブドではスゥエタ通りの王宮前に祭壇が設けられ、儀礼が行われる。

夕方になると、家々では家族総出で鍋釜など音の出るものを手に、屋敷内の隅々をガンガンと鳴らしながら廻る。

これは、ングルプック=Ngerupuk(プングルプガン)と呼ばれる儀礼。

人間の生活を乱そうとする悪霊を追い払うためだ。

陽が落ちると、オゴホゴ(Ogoh-ogoh)と呼ばれる、張りぼて人形の御輿が村を練り歩く。

この行事が始まったのは新しく、インドネシア独立後(1945年)と聞く。


こうして、地上から悪霊ブト・カロを追い払った翌日がニュピ。

ニュピは、バリ語のスピ(Sepi=静かな)が語源で「静寂の日」とも言われる。

いかにも「この島には誰もいません」と言うように、生活の匂いを感じさせないよう家に引きこもり、悪霊ブト・カロに見つからないように静かに過ごす。

この日は、労働(アマティ・カルヤ)、通りへの外出(アマティ・ルルンガン)、火の使用(アマティ・グニ)、殺生(アマティ・ルラングアン)などが禁じられている。

火は、現代では電灯も含まれる。

この4つを守り、精神を集中させ、心を穏やかにし、世界の平和、最高神イダ・サンヒャン・ウィディに祈る。

こんな崇高な気持ちになれない私は、痛切に門外漢を感じる日である。

4つの禁止事項は、バリ島にいるすべての人に義務づけられる。

数年前から、テレビ、ラジオの配信もストップされた。

信じられないのは、観光で経済が成り立っている島なのに、この日、国際線の航空便を含む島内すべての交通機関が閉鎖される。

昨年(2018年)からは、インターネットも使えなくなった。

思い切った政策だが、良いことにはバリ島民は反対しない。

ニュピは、貴重な「サイレント・デー」として、世界中から注目されている。

ついでに新しい情報。

ゴミの問題は、バリでも深刻。

特に、プラスチックゴミは目を覆いたくなるほど。

今年に入って、スーパーマーケットやコンビニの持ち帰りビニール袋が姿を消した。

エコバックの使用を推進している。

順次、小さな店のビニール袋の使用も禁止されだろう。


ニュピをサコ暦の正月と捉える人がいるが、私は違う考えだ。

バリ人に、新年という概念はないように見受けられる。

本格的な雨期に入る、第7番目の月・サシー・クピトゥから、雨期が終わる、第11番目の月(西暦の4月頃)サシー・ジェスタまでの期間は、体調を壊しやすい時期である。

昔は疫病も流行ったことだろう。

悪いことが起こるのは、悪霊のせいだと考えるバリ人のこと、雨期の終わった時期に、お祓いをしようというわけだ。

日本人的な考えで、言葉を当てはめようとすると、間違いが生ずる。

「ニュピ」は、バリ独特の祭礼「静寂の日」の名称。

ちなみに、ウク暦の最大の祭礼日は「ガルンガン」だが、ガルンガンを、日本的にお盆と考えるにも無理がある。

単純に、210日に一度巡ってくる祭礼日として理解したほうが、私にはしっくりくる。 

今年のニュピは、3月7日。

何もできない1日をどう過ごそうか、悩んでいます。
posted by ito-san at 18:44| Comment(0) | ウブド村帰郷記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: