2020年05月31日

トルコの旅・地中海の最東部の街 タルスス(3)

この日は、歩道に張り出して営業しているレストランで夕食をした。

隣のテーブルで食事をしていたグループの一人に、声を掛けられた。

流暢な日本語だった。

キリムのお店を経営している、オメール君。

恋人は日本人だという。

カッパドキアに行く予定だと話すと「実家で割礼儀礼があるから来ないか」と誘われた。

そうトルコは、イスラム圏だ。

割礼儀礼については賛成できかねるが、慣習としては見てみたい気もする。

オメール君の実家は、カッパドキアから少し足をのばすだけで行けるという。

急ぐわけでも予定のある旅でもないので、儀礼のある日を聞いた。

カッパドキヤに滞在した後に、訪れると約束をした。

長距離バスの買えるツーリストオフィスを紹介してくれた。

turkey1.jpg


行き先は、トルコ中南部の街・タシュジュ(この時は、そう思っていた)。

長距離バスは、ギョレメから南下する。

ガイドブック「地球の歩き方・トルコ編」を携帯しているので、詳しく知ることができた。

これを書いている手元にガイドブックがないので、曖昧な記憶で記載している。

ガイドブックを参考に、車窓の町々を確認する。

街の解説や見どころなどを読んだ。

メルスィン(Mersin)のバスターミナルでローカル・バスを乗り換えた。

バスは通勤客を乗降しながら、いくつかの街を通り抜ける。

タシュジュは途中下車だった。

私の乗ってきバスは、先の目的地に向けて急いだ。

降車した人の流れは、幹線道路を外れていく。

その流れに従って進むと、ロータリーに出た。

見回すと、商店の少ない閑散とした港街だった。

ロータリーの向こうには、大きな船が見えた。

タシュジュは、地中海の最東端にある街。

船着き場には、キプロス島行きの案内が出ている。

turkey2.jpg


迎えのオメール君の姿は見えない。

心細くなってくる。

しばらくして、オメール君から携帯に電話がかかった。

「今、どこにいるの?」

「タシュジュ」と答えると「違う、タルスス(Tarsus)だよ」と言われた。

通り過ぎた街だ。

どうやら私は、待ち合わせの街を間違えていたようだ。

タルススは、メルスィンの手前30キロ地点にある。

タシュジュは90キロほど先。

オメール君は、メルスィンのバスターミナルで一時間も待っていてくれたようだ。

今から、メルスィンに戻るのは時間が遅すぎる。

明日、早朝のバスでメルスィンに戻る約束をした。


今夜は、この街に泊まることになる。

視界に、宿らしいものは見当たらない。

ロータリー前にあるホテルは、時間が遅かったのか閉まっていた。

あたりはすでに暗い。

もう、決断するしかない。

ロータリーの芝の上で、一夜を明かすことに決めた。

芝生には、出航待ち人が横になっている。

野宿には、最適な場所だ。

こんな時には、昔取った杵柄が役に立つ。

と言っても、ホームレスをしていたわけではありませんよ。

ナホトカ航路発で帰路シルクロードという旅の経験者だからといって、自慢できる杵柄を持っているわけではない。

アムステルダムでは、川に繋留されていた船に潜り込んで寝た。

早朝、船主に追い出された。

チューリッヒでは、駅前で寝た。

ホームレスのおじさんたちは、地下から温風の出るマンホール近くに寝場所を与えてくれた。

まだまだあるが、こんなところにしておこう。

だからといって、57歳の親父が異国で野宿はどんなもんですか? と自問する。

そんなことは御構い無しで、スヤスヤと快適な眠りについている。


posted by ito-san at 19:04| Comment(0) | トルコの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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