2020年06月16日

トルコの旅番外編・泥棒騒動 @ バンコク(6)

バリ島ウブドに戻る前に、タイ・バンコクに立ち寄る。

3日間ほど滞在する予定だ。

いつもはシンガポールでインドネシアのビザ取得するのだが、今回はトルコの旅で立ち寄りバンコクで取得した。

ビザ取得は、トルコに行く前に済ませてある。


バンコクの人気スポット、ウイークエンド・マーケットへ出かけるという前夜に、問題が起こった。

夜11時45分、ベッドに入る。

テレビは、BGMがわりにつけたまま。

枕元の電気スタンドを消し、ガラス窓を背にして横になる。

しばらくして窓の外で、カサカサとかすかな音が聞こえた、気がした。

隣の部屋との境あたりだ。

鳩でも、止まったのだろう。

部屋は4階にある。

いくら治安の悪いと言われるバンコクでも、4階の窓から強盗が入って来るとは思えない。

テレビを消して、再び横になる。

街のネオンが、窓外を明るくしている。

寝返りをうって、ガラス窓を背にした。

ウツラウツラと睡魔と戦っていると、背後で音が聞こえた。

気のせいじゃなく、確信した。

音がした方に、ゆっくり首を動かした。

窓のカーテンが、わずかに左右に揺れている。

室内に、人の気配はない。

厚手のカーテンの端は、手を引っ込めた形跡を残してめくれている。

粟立つものを身体に感じ、形跡を凝視した。

窓外で、何かが移動する気配。

まだ、潜んでいたのか。

ベッドを降りて、窓に近づき、カーテンを引いた。

ガラス窓が、40センチほど開いていた。

明らかに、何者かが侵入しようとしたようだ。

私は、窓から顔を出した。

あとから考えると、無防備な行動だった。

ウブドでの話が頭をよぎる。

それは、泥棒に入られた欧米人の長期滞在者が、殺された事件だ。

逃げる泥棒を追って窓を開けて、外を覗いた途端、窓の下で潜んでいた泥棒に、ナイフで喉を突き刺されたのだ。

窓の外には、80センチほどの庇が出て、隣とつながっていた。

懐中電灯で庇を照らす。

雨除けの庇に、エアコンの室外機が設置されている。

隣室との間は鉄柵があり、庇より10センチほど外に飛び出している。

渡ろうと思えば、出来ないこともない。

不思議現象でなければ、何者かが侵入しようとしたことになる。

私が気がついたので、逃げていっただろう。

泥棒は、未遂で終わったのだ。

人がいないのを見計らっての空き巣ならまだしも、寝込んだところを忍び込もうとしたのか。

もしそうなら、発見された泥棒は強盗に居直ったかもしれない、そう考えると恐ろしい。

何か無くなった物はないか、確認することにした。

明日のお出かけ用のリュックは、長椅子の上に置いてある。

しかし、リュックの上にあるはずのウエストバックが無くなっていた。

ウエストバックには、パスポートと幾らかの現金が入っていた。

床から80センチのところにある窓は、二枚開きの引き違い戸。

長椅子は窓側にある。

これはピンポイントで盗られている。

窓は、幅1メートル60センチに高さ80センチ。

頼りないクレセント鍵だが、壊れていなかった。

まさか4階の部屋に、泥棒に入られるとは想像もせず、鍵を閉めわせれたのかもしれない。

ここはタイのバンコク。

しかも、何があっても不思議でないカオサン街。

感心している場合じゃない、問題はパスポートだ。

ビザも取得し直さなくてはならない。

気が重い。


時計を見ると、深夜0時20分。

被害にあってから、いくらも時間が経っていない。

今なら、捕まえることができるかもしれない.

泥棒に入られたことを報告するために、1階のフロントに向かった。

小さなカウンターに、女性がひとりいた。

「泥棒に入られた」と告げると「あっ!」というような顔になった。

「そういうことがないように、大事な物はセフティ・ボックスに預けてください」

そう言われても、眼の前にあるロッカーを見ると、とても信用できる代物ではない。

彼女は、それがどうしたのという表情で黙り込んだ。

警察を呼んでくれと頼んでも「もう遅い、明日にしてくれ」と言う。

これまでにも泥棒に入られたことがある対応に思えた。

フロントの女性も、仲間かもしれないと疑ってしまう。

これ以上話しをしても、進展しないだろう。

パスポートを再発行してもらうためには、ポリス・レポートが必要だ。

カオサンにあるツーリスト・ポリスに行くことにした。

こんな事件は頻繁にある、警察は真剣に取り合ってはくれないだろう。

案の定警察は状況を詳しく聞くわけでもなく、現場を調べようともせず、書類ができると、どうぞお帰りくださいと言わんばかりに書類を押し出した。


ホテルには、各フロアーに防犯カメラを設置して廊下を監視している。

窓外は、盲点だ。

「あの部屋は怖いので、他の部屋にかわりたい」と頼んだが「駄目だ」とあっさり断られた。

「それならほかのホテルに替わりたいので、宿賃を返してくれ」と言うと、

「もう12時をまわっているので、泊まったことになる。だから返せない」これも拒否された。

今夜は寝ずに、明日の朝にホテルを替わろうと心に決めた。

やるせない気分で、部屋に戻る。

未練がましく、長椅子の後ろの窓を開け外を覗く。

一部始終を見ていただろう庇は、何の教えてくれない。

落ち着かない気持ちで、わたしは長椅子に座り、明日は日本大使館とインドネシア大使館に連絡をしなくてはと考えている。

3日後には、バリに帰える予定だった。

未練がましく、何度目かの窓を開ける。

「なんだこれ!!」と素っ頓狂な声をあげた。

クーラーの室外機の上に、プラスチック・カバーのついた小冊子が乗っていた。

手に取ると、正真正銘の私のパスポートだ。

パスポートが返ってきた。

大事な落とし物が返ってきた時には、こんな気分になるんだろうな。

狐のつままれた気分。

不思議な泥棒だ。

泥棒に感謝するのも可笑しいが、パスポートを返してくれて有り難う。

現金とウエストバックは、見当たらなかった。

一睡もすることなく、翌日はウイークエンド・マーケットに出かけていった。

皆様も、気をつけください。


posted by ito-san at 15:24| Comment(0) | トルコの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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