2023年03月24日

あのヴァルター・シュピース氏の宿泊していた部屋に泊まれるって!(495)

前々から気になっていたのですが、ついつい32年が過ぎてしまった。

バリのことをまったく知らずに、1990年5月からウブド滞在を始めた私です。

ウブドを知るにつけ、頻繁に出てくる名前に「ヴァルター・シュピース(Walter Spies)」があった。

バリ芸能大好きさんなら、すでにご存知のことと思いますが軽く復習しておきましょう。


ヴァルター・シュピース

Walter Spies1.jpg

名前については、ウォルター、ワルター、そしてスピースと表記されている場合もある。

1895年生まれのドイツ人の画家。

バリの魅力に魅せられ、ウブド王族に招待されるかたちで、1928年よりウブドの滞在が始まる。

チャンプアン渓谷に最初の住まいを構える(現在のチャンプアン・ホテルの敷地内)。

1930年代、バリ・ルネッサンスの中心人物として活躍した。

1931年に開かれたパリ植民地博覧会に、バリのガムラン音楽や舞踊などの芸術を出店するのに尽力を尽くした人物でもある。

1936年、シュピースとボネの協力のもと、ウブドの王族スカワティ兄弟を中心にピタ・マは画家協会が設立された。

ウブドに果たした、シュピースの功績が大きい。

1937年、彼の活動が観光化に拍車をかけることとなり、やがては急速な観光化から逃れるように、クルンクン県の田舎の村イセ(Iseh)へと移住。

1938年、同性愛者であった彼は、ホモ・セクシュアルへの取り締まりが強まる中で逮捕されてしまう。

友人たちの尽力で翌年には無事に釈放された。

1940年、ドイツがオランダを占領したことをきっかけに、当時オランダ領だったバリに滞在していたシュピースは敵国人として逮捕され、愛して止まなかったバリから離れることになる。

1942年にスマトラから移送船で移動中、日本軍の攻撃により船が沈没。

シュピースは溺死した。

享年46歳という若さ。

戦火の犠牲になっていなかったら、その後のシュピースの活躍は計り知れない。


シュピースがウブドに滞在を始めてから95年、亡くなってから81年が経っている。

彼が見たウブドは想像もできないが、残してくれた絵画から少しは測り知ることは可能だ。

アルマ・ミュージアムで、数少ないシュピースの絵画を見ている。

雑誌で、過去の作品も見た。

シュピースの影響を受けた、バリ人画家の作品も多く見た。

イセ村の小高い丘の上にある隠遁生活を送った屋敷も、遠くからではあるが何度か鑑賞している。

日本語で書かれたシュピースの本も、何冊も読んだ。

※「バリ島芸能をつくった男」著者:伊藤俊治(2002年1月23日・初版第1刷)

※「バリ、夢の景色/ヴァルター・シュピース伝」著者:坂野徳隆(2004年12月3日・初版第1刷発行)



チャンプアン・ホテル内に、シュピースが滞在したと言われる部屋が残っていることは知っている。

宿泊できると聞くが、私には予算がない。

友人が泊まっていて、ラウンジでお茶をしたことはあるが、施設を見学したことがない。

旅行者のブログに、宿泊しなくても見学できるとのコメントが載っていた。

そのコメントに背中を押され、見学する覚悟ができた。

と言ってもフロントで「見学させてください」の一言が言えず、まずレストランでコーヒーを飲むことにした。

コーヒーを飲み終え、スタッフに見学の希望を伝えると、快く許可が出た。


シュピースの部屋はすぐに、見つかった。

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屋根のアランアラン草が抜け落ちて、みすぼらしい佇まいだった。

どうやらアランアランの葺替え工事中のようだ。

工事中で職人さんが屋根に上っている。

「おじゃまします!」と声はかけて室内に潜入。

二階の寝室に上がるのは、断念。

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ホテルの宿泊棟を視界から消した風景を想像する。

アトリエの面影はないが、シュピースがこの渓谷の斜面を利用した家屋に生息していたことは間違いないのだ。

あと5年すると、シュピースがウブドに滞在初めて100年になろうとしている。

ウブドは変わった。

さらに変貌して行くだろう。

そして、それは想像もできないことだ。
posted by ito-san at 18:14| Comment(0) | TrackBack(0) | ウブド村帰郷記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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