19年経過しても、私の思いは変わっていなかった。
携帯電話もスマートフォンも普及していなかった頃のウブド。
深夜1時30分頃になると、ウブド上空を通り過ぎるの飛行機の爆音が聞こえる。
東京か、大阪か、それとも名古屋へ向かっている旅客機の爆音だ。
知人の少なかったウブド滞在当初、仲良くなった友人が、ひとり、ふたりとバリを離れて行く時は寂しかった。
爆音を聞いて、部屋を飛び出して上空を見上げたことも何度もあった。
日本とバリ、時間にして飛行機で7時間ほど。
近くもあり、遠く感じる距離でもある。
和食・影武者前での別れも多い。
見送られる人は一応に笑顔を見せているが、心底の寂しさは隠しきれないようだ。
涙を見せる人も多い。
もらい泣きをしたこともある。
見送る方も寂しいだよ。
「また来るからね」
みんなのメッセージから《心からバリが好きなんだ》な、というオーラがヒシヒシと伝わって来る。
ズ〜っとウブドに滞在できる、私は幸せ者だ。
「また、来るね!」は、自分の意思で来られるけど・・・
「待ってます!」は、待つしかないのです。
バリ人は、みんなこんな気持ちで待ってたんですね。
私も「待つしかない」気持ちが、少しわかってきた。
わかっているが「また来るからね」の言葉を信じて、私は再会を心待ちしている。
見送ってばかりの私は、今度、この人とはいつ会えるのだろうと考える。
それぞれの理由でウブドを訪れて、それぞれの理由でウブドを訪れなくなる。
「会うが別れの初めとは」
歌のセリフじゃないが、会えば必ず別れがくる。
今夜も、爆音は私の頭上を、ゆっくり通り過ぎて行くだろう。
深夜の爆音を聞くたびに、先ほど別れた知人が乗っているのだろうと想像して、胸を締めつけられる思いをする。
星空の中を流れる小さな明かりは、「私を見つけてください」と言わんばかりのゆっくりした動作だ。
「ウブドが好きなら、みんな住めばいいのに!」
小さな明かりに向かって叫びたい気分だった。
今、この飛行機に、次にいつ会えるか知れない友人が乗っているのだろうと感傷的になったものだ。
みんなが、故郷にでも帰る気分で、立ち寄ることのできる店をと思って作った店が、「居酒屋・影武者」だった。
10年後、20年後にウブドに来ても、同じ場所に、昔の姿のままで影武者が残っていることが、私の夢だ。
私は、みんなを代表して故郷の家(影武者)を守るチチャックのつもりでいた。
影武者に訪れる、みんなのおかげで、私の、これまでのウブド生活が成り立ってきたと感謝している。
今、「和食・影武者」は、女将・由美さんがみんなの帰りを待っています。
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