2025年05月08日

18年前の古い日記(ミクシー)が出てきた(29)

日本に帰った今、ダドンとの日々が懐かしく思い出される。


ダドンと最後の晩餐・2007年04月22日

夕方、*ブンブン・カフェに顔を出すと*ダドンがいた。

「ウー、ウー」と、いつものように、しかめっ面をして、理解できない言葉を発している。

どうやら、来るのが遅いと言っているようだ。

私は、いつものように、とぼける。

ダドンは黒いビニール袋を手にして、これは良い匂いがすると袋を鼻に持っていく。

袋には、噛みタバコが入っている。

噛みタバコを私に手渡すと、ダドンは、もうひとつのビニール袋から「蒸かし芋」を出した。

美味しいから喰えと、芋を掴む。

私は、噛みタバコをするから、あとで食べると断った。

ダドンは、*ボレーの準備を始めた。

私はそれを見て、短パンにはき替え上半身裸になった。

ボレーを塗り終わると、今度は*シリーを作ってくれた。

いつものように、時間は経過していった。

ブンブンの契約は、5月1日で切れる。

店はすでに昨年から閉店しているが、完全閉鎖は4月いっぱいだ。

今日、ワルン・ビアビアの椅子補修がすべて終わった。

私がブンブンに来るのは、今夜が最後になるだろう。

ボレーを落としながらのマッサージが始まった。

マッサージは、いつもになく丁寧で真剣だ。

背中で聞こえるダドンの息づかいが、寂しげだった。

どことなく目頭に力がなかったように感じたのは、私の感傷か。

お祈りの時に使う中国古銭の束を、必ず、家に持って帰るようにとジェスチャーで指示した。

日に日に、荷物が無くなっていくブンブンを見て、ダドンは、閉店に気がついていたのだろう。

ダドンの前に椅子を近づけ、私は「蒸かし芋」をほおばった。

私の美味しいという仕草に、ダドンの顔がほころんでいた。

これが、最後の晩餐になってしまった。

17年前、ロジャーズ・ホームステイに突然現れたダドンは「*魔法使いダドン」として私の記憶に残った。

その後、影武者に現れ、私がブンブンに移動すると、今度はブンブンに現れるようになった。


所在を教えたわけではないが、いつの間にかダドンは、私の側にいた。
ブンブンが無くなれば、ダドンの気晴らしの場がひとつ消えてしまう。

健康が気がかりだが、縁があれば、また、どこかで会えるだろう。

最後となるかもしれない小遣いを渡した。

「さようなら、ダドン」

Dadon-Mizuno-yousuke.jpg
ダドンを中心に、右に水野さん、左に洋祐君


*ブンブン・カフェ:https://informationcenter-apa.com/gt_bumbung.html
*ダドン:平民カーストのバリ語で「お婆ちゃん」
*ボレー:https://informationcenter-apa.com/gt_boreh.html
*シリー:https://informationcenter-apa.com/gt_sirih.html
*魔法使いダドンとの出会いは、こちらを読んでください。
「極楽通信・UBUD」ウブドに沈没『 魔法使いのおばあちゃん現れる』https://informationcenter-apa.com/ubud-chinbotu23.html
posted by ito-san at 13:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 土岐市に移住 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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