スクーター商戦がバリで始まったのは、いつ頃だったか?
まず、600万ルピアの台湾製の安価なスクーターが出た。
100ccクラスで、消臭剤(キムコ)に似た名前だった。
すぐに壊れ、修理が不可能だったので、半年もすると市場から消えていた。
2005年に、ヤマハがオートマチックのスクーター「ヌーフォ=NEUVO」と「ミオ=Mio」を発売。
ホンダは同年、オートマチック・スクーター「ファリオ=VARIO」を発売。
私のバイク遍歴は、アストレア800→アストレア・スター(ASTREA STAR)→アストレア・プリマ(ASTREA PRIMA)→スープラ(SEPRA)→スープ
ラX(SEPRA X)。
そして、オートマチックになって、ファリオ→スクーピーとホンダ一辺倒できている。
タイヤの空気が少なくなっているのに気づき、プンゴセカン村にあるバイク修理屋に立ち寄った。
若奥様が店先に出て来た。
いつものようにニコニコと微笑んで「アパ・カバール?」と声を掛けてくれる。
この店でガソリンを入れているが、今日は、タイヤに空気を補充してもらいに来た。
私のインドネシア語のボキャブラリーは極小で、どう頼んだものか悩んだ。
タイヤに空気を入れる。
それなら、空気(アンギン)と入れる(マスッ)でよいだろう。
私は臆せず「マスッ・アンギン」と元気に答えた。
その言葉に、若奥様の美しい微笑みが消えた。
「だからどうしたの」とでもいうような、困り顔になっている。
私が世間話をしに寄ったのではないことはわかっている。
若奥様は、すみやかに悟ってくれて、主人に空気を入れるように頼んでくれた。
後で知ったが、マスッ・アンギン(Masuk Angin)は風邪(をひいた)の意味だった。
若奥様は「ここはベンケル(修理屋)よ。風邪をひいたのなら、ルマ・サキット(病院)かアポティック(薬局)へ行くべきよ」とでも言いたかったのだろう。
外国人がベンケルに立ち寄って「マスッ・アンギン!」と堂々と言われた時の若奥様は、さぞかし面食らったことだろう。
空気を入れてもらうには、マウ・アンギン(空気が欲しい)、ミンタ・アンギン(空気を下さい)を使いらしい。その他、「ブリ・アンギン
(Beri Angin=空気を買う)と言うのだと知った。
発音が悪くて通じないときは、最後の手段として、タイヤを指さし「アンギン・アンギン」と叫べばいいと友人が教えてくれた。

